- マシュマロ・テストとは子供の忍耐力や将来の計画性を調べる実験
- これをカラスで行うことで、本能に逆らって自身をコントロール能力や、将来の計画能力を調査した
- 結果、カラスは報酬がより良くなる場合、己を制御し我慢して待つという行動が取れることが明らかになった
目先の利益を我慢することで、将来より価値の高い結果を得る――
こうした自己制御行動は、「未来を見据えて計画を立て意思決定する」認知能力がなければ成立しません。
1960年代にスタンフォードのウォルター・ミシェル博士は、人間のこうした認知能力の発達を研究するために、マシュマロ・テストを提案しました。
これは、子供に「15分間マシュマロを食べないで我慢できたらもう一個マシュマロをあげる」と約束して、子供が2つ目のマシュマロを見事ゲットできるかどうか観察するものです。
これまで、こうした研究は主に人間のみが対象で、他の動物との比較調査はあまり行われていません。そこで新しい研究では、このマシュマロ・テストをカラスで実験してみたと言います。
ずる賢いと言われるカラス、彼らの認知能力は一体どの程度発達しているのでしょうか?
この研究は英国ケンブリッジ大学の心理学者Rachael Miller氏が率いる研究チームにより発表され、動物行動学の査読付き科学雑誌『Animal Cognition』に10月19日付けで掲載されています。
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-019-01317-7
マシュマロ・テスト
通常のマシュマロ・テストは、人間に言語を用いて説明します。
しかし、言葉がわからないカラス相手に同じ実験をするわけにはいきません。
そのため研究者たちは実験を少し修正し、透明なケースの中に一部が突き出した回転するトレイを置いて、その上に2つのおやつを置きました。手前には満足度の低いおやつ、奥には豪華なおやつ(例えばリンゴ片の代わりに肉)か量が多いおやつを置きます。
どちらかのおやつを取った場合トレイの回転は停止します。そのため、おやつはどちらか1つしか手に入れることはできません。
我慢できずに最初にやってくるおやつを取ってしまうと、奥にある豪華なおやつは手に入らないというわけです。
この装置の仕組みを十分学習させた上で、本番のテストを行いました。
これは比較実験なので、同時に子供も使って同じ装置で実験しました。ちなみに、この実験では子供へのご褒美はちょっと豪華なおやつではなく、キラキラステッカーにしたそうです。
実験では飼育されたカラスではなく、野生のカラスを9匹捕まえてきて行ったそうです。人間は3歳から5歳までの子供61人に協力してもらいました。
結果は、人間の子供とカラスで違いがありませんでした。どちらの場合も、より良い報酬のために、評価の低い報酬は見送って辛抱強く待つ選択をしたのです。