体を清潔にするための「アリ風呂」?
撮影したのは、同国在住の写真家トニー・オースティン氏です。
オースティン氏は当時、自然観察のため、ビクトリアにあるスワン・レイク・クリスマスヒル自然保護区(Swan Lake Nature Sanctuary)を訪れていたそう。
何の収穫もないまま3時間が経ち、乗ってきた車に戻ろうとしたところ、10メートルほど先の砂利道に数羽のカラスが飛んできたといいます。
そしてすぐに、その内の1羽が奇妙な行動を取り始めました。
そのカラスはアリが通る道の上にゆったりと羽を広げて、全身にアリを這わせ始めたのです。
オースティン氏は「最初は誤って蟻道に着陸してしまったのかと思いました。ところが、そのカラスは特に慌てることもなく、リラックスしているようでした。
また、周りの仲間たちも落ち着いた様子で、その光景を眺めていました。
賢いカラスは仲間がアクシデントに見舞われると、騒いだり動揺するのが普通です」と話します。
オースティン氏はこの行動の謎を解明するため、地元の野生写真家が集まるFacebookコミュニティーの「Picture perfect Vancouver Island」に写真を投稿しました。
その結果、これは「蟻浴(ぎよく、anting)」という鳥類に特有の行動であることが判明したのです。
蟻浴とは、鳥が自らの体に昆虫(大半がアリ)を擦り付ける行動で、1935年にドイツの鳥類学者エルヴィン・シュトレーゼマンによって報告されました。
しかし観察記録は古い一方で、蟻浴の目的は完全に解明されていません。
有力な説は「体を清潔に保つ」というものです。
専門家によると、アリは有害なダニや寄生虫、菌類を寄せ付けないための化学物質を含む分泌液を放出します。
鳥はそのアリの分泌液を自分の羽に塗りつけることで、殺菌や殺虫効果を得ていると考えられるのです。
現在では、250種以上の鳥類に蟻浴行動が確認されており、日本ではカラスやムクドリがその代表です。
このカラスも「アリ風呂」にゆったり浸かっているところだったのでしょうね。