
Point
■「ワタリガラス」にも人間と同じように「感情伝染」の能力があることが判明
■「感情伝染」は、コミュニケーションや社会的関係を円滑にするために必要不可欠な能力である
■実験でワタリガラスは相手のネガティブなリアクションを見ることで、同じ悲観的反応を示した
共感能力や感情伝染は、社会的なコミュニケーションを円滑にするために必須の能力だ。人間はもちろん、猿など哺乳類にもこの能力があることが知られている。
ところがウィーン大学とチューリッヒ大学の研究によると、「ワタリガラス」にも同じ感情伝染の能力があることが発見された。
鳥類において感情伝染の能力が見受けられたのは今回が初めてだという。これによって生物における共感能力の進化・発達史に新たな展望が期待されている。
研究の詳細は、5月20日付けで「PNAS」上に掲載された。
https://www.pnas.org/content/early/2019/05/14/1817066116
生物の中でもトップクラスの賢さ!
「ワタリガラス(英名:common raven)」は、生物の中でもトップクラスの賢さを誇ることで知られている。
例えば先のことを予測して行動できる能力や、記憶を元手に便利な道具を作る能力、さらには釣り糸を氷の穴から垂らして魚を釣り上げることもできる。
余談だが、ハリーポッターの「レイヴンクロー寮」はワタリガラスに由来している。だからワタリガラス並みに賢い生徒しか入れないのだ。

こうした賢さから、研究チームは「ワタリガラスにも感情伝染の能力があるのではないか」と推測した。
感情伝染は他人の表情を無意識的に読み取り模倣するが、これは人間関係の絆を深め、「あなたの気持ちを共有していますよ」というサインとして重要な役割を果たしているのだ。
とくに社会的な動物であればあるほど、感情伝染は必要不可欠な能力となる。