最盛期の半分ほどにまで縮小

バルト海に生息する「タイセイヨウダラ(学名:Gadus morhua)」は、かつてこの地域最大の魚として、ニシンと並び漁業の主役を担ってきました。
そのサイズは大の男性でも両手で抱えきれないほど大きなものでした。
ところが1990年代以降、その数が激減し、体のサイズも年々小さくなっていったのです。
最も大きなタラはかつて体長115センチにもなりましたが、2019年には最大サイズでも約54センチにまで縮小していることが確認されました。
小さいものだと女性の小さな両手にも乗っかるほどでした。
つまり、体の長さがほぼ半分、体積で見れば激減している計算になります。

この異常事態に疑問を抱いた研究者たちは、1996年から2019年までにバルト海で捕獲されたタラの「耳石(じせき)」と呼ばれる小さな骨を調査。
耳石は魚の年輪のようなもので、年ごとの成長の記録が刻まれています。
分析の結果、タラの成長速度の傾向自体がガラリと変わっていることが判明しました。
1996年時点では成魚になるまでに比較的長い年月をかけて大きく成長していたのに対し、2019年の個体は早く成熟する代わりに、大きくならない傾向が見られたのです。
つまり、タラは「小さくても早く子どもを産める体質」に進化していたのです。