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Credit: GEOMAR – “Shrinking” Cod: How Humans have altered the Genetic Make-Up of Fish(2025)
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乱獲でタラの体が「衝撃的な縮小」を起こしていた (2/2)

2025.07.01 12:00:41 Tuesday

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DNAにも刻まれていた「乱獲の爪あと」

さらに驚くべきことに、こうした体の変化はただの“環境の影響”ではなく、タラのゲノム(DNA)にまで変化が起きていたことが突き止められました。

チームは、過去25年間に捕獲されたタラのDNAを網羅的に解析。

その結果、成長に関わる遺伝子の一部に、明らかな「方向性のある変化(進化)」が起きていたのです。

具体的には、タラの成長に関与すると考えられる336個の遺伝子領域で、ある遺伝子型が他よりも多く残る傾向が見られました。

これはつまり、「大きくゆっくり育つ」タラは漁で早々に捕まってしまい、「小さくても早く成熟する」個体だけが生き延びて子孫を残す――という自然選択ならぬ“人間選択”が起きていたことを意味します。

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タラの耳石/ Credit: GEOMAR – “Shrinking” Cod: How Humans have altered the Genetic Make-Up of Fish(2025)

これまで進化は数千年、数万年という時間スケールで起きると考えられてきましたが、今回の研究は、たった四半世紀ほどの乱獲が、野生魚の遺伝子を根本から変えてしまったことを示す衝撃的な証拠です。

しかもこの変化は、単に小型化するだけでなく、成長に必要な代謝やホルモン、卵の浮力調節といった機能に関わる遺伝子にも影響を及ぼしていました。

環境の変化(たとえば水温上昇や酸素不足)ももちろん影響していますが、それだけではここまでの変化は説明できないと研究者は言います。

事実、過去25年で海水温の上昇によるサイズ減少は理論上6%程度と予測されていましたが、今回のタラの縮小は48%という、まさに「進化的変化」です。

2019年から東部バルト海のタラ漁は全面禁止となりました。

しかし、いまだにタラの体サイズの回復は確認されていません。

これは人間の手で急速に引き起こされた進化を元に戻すには非常に長い時間がかかることを示唆しています。

タラがもとの大きさに戻るには何世代もの自然な繁殖を待たねばならないかもしれません。

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乱獲でタラの体が「衝撃的な縮小」を起こしていた (2/2)のコメント

ゲスト

というより戻ることはなさそうに見えます。
大きくならないといけない理由がもうないのですし。
人間という天敵に対応するための進化をしてしまったのですから、仮に戻ることがあっても人間が再び彼らを狩るようになれば最初の時よりも早く同じ進化をするようになるでしょう。
でも良いデータが取れたじゃないですか、人間に狩られるとどう進化するのかという傾向とその対応速度が分かったわけです。
他の魚や動植物も同じような進化をするかもしれないという想定を今後の狩猟計画に組み込むことで食糧生産の正確な見積もりができますよ。

ゲスト

興味深い研究の紹介をありがとうございます。ゾウの牙とかサイの角とかカブトムシの角とかも、人間が勝手に価値を見出して長い個体を乱獲するものだから、自然界ではどんどん短くなっているそうですね。ちなみに、「自然選択ならぬ“人間選択”が起きていた」と記事にありますが、自然選択の対義語として「人為選択」の方が適切な用語だと思います。

ゲスト

単に小さいタラだけセレクションしてきただけなので、大きいタラをセレクションして海に戻せば良いだけ。
言うは易しだし、莫大なコストはかかるけど25年かけて養殖し続ければ元に戻るかも。
犬で言うならチワワとセントバーナードみたいな感じで。

ゲスト

オオシモフリエダシャクの工業喑化とかあるから、「これまで進化は数千年、数万年という時間スケールで起きると考えられて」きたってのは言い過ぎじゃないかな

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