ネガティブ感情は伝染しやすい
研究チームはワタリガラスの感情伝染能力を調べるため、「ネガティブ感情」の発露を用いた一連の実験を行なった。これはポジティブ感情よりも観察がしやすく明白な証拠となることが理由だ。
初めに8羽のワタリガラスから4組のペアを作り、各々のペアに2つのボックスを用意してどちらか一方を選んでもらった。ボックスの片方には大好物のチーズが入っており、もう片方には何も入っていない。
この共同作業を通して、まずはペアで同じ食べ物を与えられるということをカラスに確認させた。

これを数回行なった後、ペアを金網で仕切ってカラスを「実演者」と「観察者」に切り離した。
まず実演者となるカラスには「ドッグフード(好物)」か「ニンジン(苦手)」が入ったボックスを与える。このときカラスに与えられるボックスは感情を操作するために、実験者がどちらか一方を選ぶ。
一方、観察者となるカラスは相方がどう振る舞うのかを見ることしかできないが、どちらの食べ物が与えられたかを確認することはできない。つまり相方のリアクション勝負だ。
そして実演者の反応を見た後で、観察者のカラスにもボックスが与えられる。

すると実演者がネガティブな振る舞いを見せると、それを見ていたカラスはボックスをすぐ開けず、長い時間をかけて調べ始めたのだ。
数回の実験の後、これは悪いムードが伝染したときに見せる振る舞いであると判明した。反対に実演者がポジティブな反応をしたときは、観察者側もすぐににボックスを開けていたのだ。
賢さゆえにボックスの中身を見ずとも、相手がヘコんでいたら自分もヘコんでしまうようだ。人間も賢い人のほうがうつ病になりやすいというデータもあるし、知性と感情の伝染には関連性があるのだろう。