1日あたりのミルク量が5L増加
トルコ中央部・アクサライで牧畜業を営むイゼット・コチャック(Izzet Kocak)氏は、農場のウシの一部にVRヘッドセットを装着し、薄暗い搾乳室ではなく、日当たりの良い屋外にいると思い込ませ、ミルクの生産量が増えるかどうかを実験しました。
同国のニュースサイト「Anadolu Ajansi」の取材に対し、コチャック氏はこう話しています。
「トルコでは現在、飼料価格が高騰しているため、より多くのミルクを生産するための代替方法を探さなければなりません。
特に冬場はウシを室内に閉じ込める時間が長くなるので、VRを使って外にいると錯覚させれば、ウシが多幸感を抱き、より多くのミルクを生産してくれるだろうと考えました」
コチャック氏は今回、2頭のウシにVRヘッドセットを装着し、屋外の牧草地の映像を見せる実験を10日間つづけました。
また、リラックス効果を高めるため、VRの装着前に心地よいクラシック音楽を聴かせたといいます。
その結果、VRを装着したウシでは、ミルクの質と量が大きく増加していることが観察されました。
VRなしではウシのミルク生産量は1日約22リットルなのに対し、VRありでは1日約27リットルとなっていました。
約5リットルも生産量が増えたことになります。
使用されたウシ用のVRヘッドセットは、ロシアのモスクワでテストされ、獣医師と連携して開発されたものです。
実験の成功を受けて、コチャック氏は「ロシアからさらに10個のVRヘッドセットを取り寄せ、ウシに取り付ける予定」と話しています。
この成果は牧畜業にとってプラスである一方、倫理的な側面からは疑問の声も上がっています。
より多くのミルクを得るために、ウシを”偽りの世界”に閉じ込めても良いのかどうか。
今後、人の手によってマトリックスへと誘われるウシが増え続けるかもしれません。