カラスは生後4ヶ月で知能的に成熟していた
研究チームは、飼育下にある8羽のワタリガラスを対象に、認知レベルを評価する「霊長類認知試験バッテリー (PCTB)」テストを実施しました。
PCTBは動物の認知能力を調べる標準的なテストで、計33種類のタスクを含みます。
例えば、カップの中に隠した物の位置を当てられるか、数の足し算を理解しているか、人から学習し、コミュニケーションを取れるかなどです。
実験では、同じテストを生後4、8、12、16ヶ月の4回にわたり行いました。
その結果、カラスは生後4ヶ月ですでに高度な認知能力を発達させており、その後のテスト期間に能力は変化しないことが判明しました。
タスクパフォーマンスは8羽すべてで完全に一致しなかったものの、平均的に高いスコアを記録しています。
このスコアを、以前に同じテストを受けた106匹のチンパンジーと32匹のオランウータンのスコアと比較しました。
すると、ワタリガラスの認知能力は、空間記憶をのぞいて、成熟したチンパンジーおよびオランウータンのスコアと同等でした。
以下はテストの様子です。
野生のワタリガラスは一般に、生後4ヶ月で親から独立しますが、性的に成熟するにはもう数年かかります。
研究主任のシモーネ・ピカ氏は「ワタリガラスはおそらく、急速に変転する野生環境の中で生き残るために、認知能力の発達スピードを早めている」と指摘します。
一方で、ワタリガラスの認知能力の高さを、他のすべてのカラスに認めることはできていません。また、今回のテストが野生の個体を対象にしていない点も注意が必要でしょう。
研究チームは今後、野生を含むワタリガラスの成長過程や採餌方法、人間との社会的相互作用を調べるとともに、カラス全体の認知レベルを明らかにしていく予定です。