幸せなシングルは「恋人がいない状態」を欠乏だと考えにくい
今回の研究の背景にあるのが「自己拡張理論(self-expansion theory)」です。
この理論では、人には新しい知識や経験、視点を取り込み、自分自身の世界を広げていこうとする欲求があると考えます。
たとえば、新しい恋人ができると、それまで知らなかった趣味を知ったり、異なる価値観に触れたり、行ったことのない場所へ出かけたりする機会が増えます。
恋愛によって「自分の世界が広がった」と感じるのは、こうした自己拡張が起きるためです。
これまで、この自己拡張は主に恋愛関係の中で研究されてきました。
しかし研究チームは、ここで1つの疑問を持ちました。
「自分を成長させるために、本当に恋人は必要なのでしょうか」
友人や家族との交流、新しい趣味、旅行、仕事、あるいは一人で過ごす時間からでも、同じように自分の世界を広げることはできるはずです。
そこで研究者たちは、シングルの人々に「シングルでいることには、自分を人間として成長させる可能性がある」といった考えにどの程度同意するかを尋ね、その後の日常行動を調べました。
すると、シングル生活を「成長の機会」だと考えている人ほど、新しいスキルを学ぶ、チームスポーツに参加する、友人と食事に出かけるといった、新しく自己拡張的な活動を多く行っていました。
さらに、こうした人々はシングルでいることへの恐怖が少なく、現在のシングル生活への満足度が高いだけでなく、人生全体の満足度や幸福感も高い傾向にありました。
また、自分で人生を選んでいるという「自主性」、何かをうまくできるという「有能感」、他者との「つながり」も強く感じていました。
つまり、幸福なシングルに見られた特徴は「恋人なんて必要ない」と考えていることではありません。
むしろ重要なのは、「恋人がいない今でも、自分の人生には新しい経験や成長の機会がある」と捉えられていることだったのです。


































