イルカも「性の喜び」を知るためのクリトリスを持っていた
これまでの研究でイルカたちは人間と同じように、”生殖を目的としない性行為”を行うことが知られていました。
これは一般に、個体間の絆を結ぶために行われていると考えられています。
そんな性に前向きなイルカたちですが、既存のイルカの生殖研究はペニスや子宮に集中しており、メスのクリトリス(陰核)に関してはほとんど調べられていませんでした。
イルカのクリトリスは膣の上部に配置されているため、妊娠や出産に焦点をあわせた研究では見過ごされがちだったのです。
そこでマウント・ホリヨーク大の研究者たちは、自然死したイルカ34匹からクリトリスを含む性器を採取し、詳細な分析を行うことにしました。
結果、イルカのクリトリスは人間と多くの点で類似することが判明します。
イルカのクリトリスは人間と同じように太い神経の束が集まっており、表面の皮膚は周囲と比べて3分の1の薄さしかありませんでした。
豊富な神経は敏感さと関連し、皮膚が薄ければ外部からの刺激をより強く神経に伝えられるようになります。
またクリトリスの内部には海綿体が存在し、血液の流入によって勃起できることが示されています。
勃起することで薄い皮膚が広げられ、肥大して物理的に硬くなることで刺激や振動を伝達しやすくなる効果があります。
さらにクリトリスの表面付近を調べたところ、人間と同様に接触・振動・圧力に対応して快楽を生じさせる神経網が構築されていることが判明しました。
これらの結果は、イルカたちはクリトリスを使って人間と同じような「性の喜び」を得ている可能性が高いことを示します。
加えて研究者によれば「イルカのクリトリスは非常に大きく思えた」とのこと。
実際、カップルとなる相手がいないメスイルカは、大きなクリトリスを海底の突起物にすりつける「自慰行為」を行うことが知られています。
しかしここで問題となるのは、なぜイルカたちはここまで発達したクリトリスを持つようになったかです。
クリトリスは性器の外部に位置しており、なくなったとしても、生殖能力そのものに影響を及ぼしません。
(※次ページではイルカのクリトリスの3Dスキャン映像(CG)が表示されます)