道具の使い方もオウムによって違っていた
複数の道具を同時に使うことは、人類の技術開発に大きな役割を果たしましたが、他の動物ではほとんど観察されていません。
数少ない例として、チンパンジーがハンマーと金床を使ってナッツを割ります。
本研究では、道具を製作できる能力を持つシロビタイムジオウムを対象に、複数の道具を使えるかどうかを実験しました。
チームが設定したのは「ゴルフクラブ課題」と呼ばれるタスクです。
一種のパズルボックスで、課題をクリアすると報酬としてエサが出てきます。
具体的には、金網の張られた箱の中央に小さな穴があり、まずそこにボールを入れます。
次に、同じ穴にスティックを挿し込み、台座上のボールを左右どちらかの溝に落とします。
すると、落ちたボールが重しになって、エサが自販機式に出てくるという仕組みです。
実験の結果、一部のオウムにとっては、この複雑なタスクも比較的簡単であることが証明されました。11羽のうち、5羽があっさりとクリアしてしまったのです。
しかも一旦システムを理解すると、すべてのオウムが次回からのタスク時間を大幅に短縮させました。
これは、オウムたちが最初に成功した際、必要な手順をすぐに見つけ出して記憶できることを示します。
さらに、そのうちの3羽(フィガロ、フィニ、ピピン)は、異なる仕方でスティックを操作していたのです。
ボールを穴に入れるまでは同じですが、フィガロはスティックを上下のくちばしで挟み、フィニは上のくちばしと舌で挟み、ピピンは霊長類のように足を器用に使って操作しました。
これについて、研究主任のアントニオ・オスナ=マスカロ(Antonio Osuna-Mascaró)氏は、こう話します。
「もっとも興味深い点は、オウムたちが棒の握り方やボールの打ち方について、驚くほど器用に、それぞれ独自の技術を考案していたことです。
これは、道具の使用が遺伝子にかかわる行動ではなく、自発的なイノベーションと、より一般的な認知処理であることを示しています」
バーミンガム大学(UB・英)の発達心理学者、サラ・ベック(Sarah Beck)氏は「今回の研究は、オウムが道具を複合的に使用できることを示した初めての例ですが、私たちが現在取り組んでいる子どもの認知機能の理解にも役立つ」と述べています。
一方で、すべてのオウムがタスクをクリアできたわけではありません。
中には、イライラして箱をくちばしでつつき、傷つけてしまったものもいたという。
またフィガロは、棒で箱を持ち上げてから落とし、その衝撃でエサを無理やり出すという荒ワザも披露しました。
こうした性格の多様性も、オウムに高い知性があることの印かもしれません。