一部のレトリバーは太りやすい「二重苦」を抱えている
これら実験の結果は、POMC変異を持つラブラドール・レトリバーとフラットコーテッド・レトリバーが、太りやすい「二重苦」を抱えていることを示します。
彼らは、食事と食事の間により強い空腹を感じるだけでなく、消費カロリーも少ないのです。
ラファン氏は、次のように結論付けています。
「私たちは、POMC遺伝子の変異により、イヌの空腹感が増すことを発見しました。
彼らは変異のないイヌよりも食間にすぐおなかが空くため、過食する傾向があります」
しかも、「もっと食べたいだけでなく、カロリー消費が速くないため、必要なカロリーは少ない」のです。
このことから、POMC変異は、脳内の経路を変化させ、体に飢餓信号を引き起こすものだと分かります。
いわば飢餓状態だと錯覚した体が、生命を維持するために、消費エネルギーを節約し、より多くのエネルギーを取り入れようとするわけですね。
ラブラドール・レトリバーの約25%、フラットコーテッド・レトリバーの約66%が絶えずそのような状態にあるということは、レトリバーの飼い主の多くが、愛犬の食欲に上手に対処しなければいけないことを示しています。
実際、POMC変異のあるレトリバーは、常に食べ物を探しており、飼い主の管理(食事や運動)が不適切でなくとも、太ってしまうことがあるようです。
では、POMC変異を持った「食いしん坊で痩せにくい」レトリバーには、どう対処できるでしょうか。
ラファン氏は、「これらのイヌをスリムに保つのは難しい」とした上で、次の方法を用いることで「管理が可能だ」と述べています。
1日に与えるエサの量はそのままで、食事の回数を増やすことで、レトリバーの空腹感を紛らわすことができるというのです。
また、パズルフィーダー(エサを取りにくくするエサ入れ)を用いたり、庭にエサをばらまいたりすることで、一気に食べないよう工夫することもできます。
さらに、愛情を示す方法として、「おやつを与える代わりに、散歩してあげる」などの代替方法も効果的なようです。
レトリバーは日本でも大人気であり、私たちが飼育しているレトリバーも、POMC変異を持っている可能性があります。
そんな遺伝子的に食いしん坊なワンコには、一層気を遣って、できるだけ健康でいさせてあげてくださいね。