カモフラージュには「多大な代謝コスト」がかかっていた
本調査では17匹のタコからそれぞれ皮膚サンプルを採取し、ブルーライト(青色光)を照射する実験を行いました。
タコの皮膚に含まれる色素細胞はブルーライトに反応して伸縮することが知られています。
チームはこの現象を利用し、皮膚サンプルが活動していないときの酸素消費量と、ブルーライトを浴びて伸縮する(つまりカモフラージュする)ときの酸素消費量を計測しました。
この酸素消費量がカモフラージュを起こすのに必要な代謝コストの指標となります。
こちらは光に反応して色素細胞が伸縮する皮膚サンプルの様子です。
※ 音声はありません。
次にチームは皮膚サンプルから得られた酸素消費量の測定値をもとに、タコがカモフラージュを行うときの体表面積全体の代謝コストを試算。
それと同時に、タコが活動をしない安静時にどれだけの酸素が消費されるかも調べ、それぞれを比較しています。
その結果、タコのカモフラージュには多大な代謝コストがかかっていることが判明しました。
まず、タコ(体重100グラムと仮定)の体が安静時に消費している酸素量は平均で毎時237マイクロモルでした。
一方で、同じ体重のタコがカモフラージュをするときに消費する酸素量は平均で219マイクロモルだったのです。
これは1時間ごとに自然と消費される酸素量と同じだけの量を瞬間的なカモフラージュ時に使っていることを意味します。
この理由について研究者らは「(カモフラージュには)多くの神経系と筋肉系が関与しているため、体色変化にかかるエネルギーコストも自然と高くなっている可能性が高い」と説明しました。
またこれはタコの寿命を考えると、莫大なエネルギーコストになると研究者は指摘します。
タコはそもそも寿命の短い生き物です。
通常だと1〜2年ほど、短いものだと半年〜1年程度、長いものでも4〜5年であり、タコにとっては1分1秒が捨てることのできない大切な時間となります。
その中でカモフラージュを使うことは、かなり寿命を削ってしまう行動だと考えられるのです。
そして今回の結果はタコが自然界でカモフラージュを連発せずに、なるべく控えている理由を説明するものでした。