Credit:canva
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メタボの真の原因が判明!中年期から脂肪前駆細胞が活性化していた!

2025.05.03 17:00:44 Saturday

人間は40歳を過ぎたあたりから、お腹まわりに特に脂肪がつきやすくなってきます。

食事に気をつけ、運動もそこそこ続けているのに、この部分の脂肪がじわじわと増えてきて悩んでいる人も多いでしょう。

これまで私たちは、この現象について、「成長が止まった大人はエネルギー消費量が減るため、若い頃と同じ食生活を続けるとエネルギーが余り、脂肪として蓄積されてしまう」と言われていました。

実際、医学界でも、成長期の終了後に基礎代謝量(Basal Metabolic Rate)が低下し、筋肉量も減少することで、エネルギー収支の不均衡が肥満やメタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)を引き起こすと考えられていました。

ところが、最新の研究が、この見方に一石を投じました。

アメリカの医療研究機関City of Hope(シティ・オブ・ホープ)が発表した成果によれば、単なるエネルギー収支の問題にとどまらず、年齢とともに体内で新たに現れる細胞が、脂肪の蓄積を後押ししていることがわかったのです。

体の中では、中年期になると「脂肪前駆細胞(adipose progenitor cells)」という脂肪のもとになる細胞が出現し、脂肪細胞への変化が加速される、つまり中年期以降太りやすくなるのは単なる食生活だけの問題ではない可能性が出てきたのです。

この研究成果は、2025年4月25日に科学誌『Science(サイエンス)』に掲載されました。

New Research Explains why our Waistlines Expand in Middle Age https://www.cityofhope.org/new-research-explains-why-our-waistlines-expand-in-middle-age
Distinct adipose progenitor cells emerging with age drive active adipogenesis https://doi.org/10.1126/science.adj0430

中年太りは細胞レベルで始まっていた

今回の研究で注目されたのは、脂肪細胞になる前の段階に存在する「脂肪前駆細胞(adipose progenitor cells)」です。前駆細胞とは、特定の細胞へと成長する前段階の細胞のことで、体内で必要に応じて分化(特定の役割を持つ細胞に変化)する能力を持っています。

若い頃は、こうした脂肪前駆細胞は比較的静かに存在しているだけです。ところが加齢とともに、特に中年期に差しかかると、これらの細胞が突然活性化しはじめることが今回の研究で明らかになりました。

つまり、単に食べ過ぎたから、運動しなかったからというだけではなく、体そのものが「脂肪を溜めやすいモード」へと切り替わる仕組みが存在するのです。

この発見は、中年太りのメカニズムがこれまで知られていた「代謝が落ちるから脂肪が燃えにくくなる」、という単純な原理ではない可能性を示しています。

実際には、体内で新たな脂肪細胞を作る「材料」が加齢によって増え、それが脂肪組織を拡大させていたのです。

研究では、マウスを使った実験と、ヒトから採取した脂肪組織サンプルを用いた解析の両方が行われました。

Credit:Wenxiang Hu et al., Science (2025)

マウスでは、中年期に入ると脂肪組織に現れる新しい前駆細胞が、積極的に脂肪細胞へと変化していく様子が観察されました。さらに、人間の脂肪組織においても、年齢とともに類似の前駆細胞集団が増える傾向が確認されています。

つまり、「年を取ったら太りやすくなる」というのは、自己管理の失敗ではなく、生物学的な必然だったのです。

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