メタボリックシンドロームを予防できる可能性も
今回の研究は、「年齢とともに太りやすくなるのは避けられない宿命だ」とあきらめる必要がないことも示唆しています。
なぜなら、加齢によって活性化する脂肪前駆細胞(adipose progenitor cells)をターゲットにすることで、将来的に肥満やそれに伴う健康リスクを抑える新たな治療法が開発できるかもしれないからです。
肥満は見た目だけの問題ではありません。
特に内臓脂肪が増加すると、糖尿病(type 2 diabetes)や高血圧(hypertension)、心血管疾患(cardiovascular diseases)など、いわゆるメタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)と呼ばれる複数の健康リスクを高めることが知られています。
もし、脂肪前駆細胞の異常な活性化を抑制できれば、こうした疾患を根本から予防する道が開かれる可能性があります。
実際、City of Hopeの研究チームも、この細胞の挙動を制御する薬剤や治療戦略の開発に向けて、今後さらに研究を進めていく予定だと述べています。
いずれ、年齢による自然な脂肪増加を穏やかに抑え、健康寿命を延ばす新たな選択肢が生まれるかもしれません。
とはいえ、現時点ではこの研究は基礎段階にあり、すぐに実用化されるわけではありません。
また、たとえ体内の細胞変化が避けがたいものであっても、日常生活の中での食事管理や適度な運動習慣が脂肪蓄積を遅らせ、全体の健康リスクを下げることに変わりはない、と研究者たちは強調しています。
メタボはいつまでも若い頃と変わらない食事や、運動をサボっているからという怠惰だけが理由でなかったようです。
ちょっと気を使っているという程度では避けられない、想像以上に根の深い健康の問題だったのです。