なぜ「教えられても間違える」のか?なぜ行動を変えないのか?
人間には「自分の行動が悪い結果を招くとわかっていながら、同じことを繰り返してしまう」という性質が存在します。
このような傾向は、日常の中では意識的にもしくは無意識に表れ、たとえば依存症や有害な人間関係、遅延癖などにも見られます。

こうした行動は、本人の意思が弱いから、あるいは怠惰だからと解釈されがちです。
しかしUNSWの研究チームは、こうした解釈では不十分だと考えました。
そこで彼らは、人間の「失敗や罰から学習すること」に個人差があるのではないかという仮説を立て、そのことを検証することにしました。
研究には、18歳から63歳の267名の参加者が集められました。
国籍は24カ国にわたり、年齢や文化的背景の異なる人々が含まれています。
参加者はまず、”Planets & Pirates”という名のコンピューターゲームに挑戦します。
このゲームの目的は、クリックによってできるだけ多くのポイントを獲得することです。
ゲームには2つの惑星(R1とR2)が登場します。
最初の段階では、どちらの惑星をクリックしても50%の確率で報酬(+100ポイント)が得られる構造になっています。

しかし中盤以降、片方の惑星(R1)には“罰”が仕込まれており、クリックするとランダムに海賊船が現れてポイントが大きく減少します。
もう片方の惑星(R2)は安全で、罰を引き起こしません。
プレイヤーは罰が起きるメカニズムを自分で推測し、どの惑星を避けるべきかを学習していきます。
そしてゲーム終盤では、研究者から「どちらの惑星が罰を引き起こしているのか」が明示され、行動の変化が見られるかどうかもチェックされます。
さらに研究チームは、ゲーム中の行動だけでなく、参加者の「認知の柔軟性」「習慣的傾向」「アルコール使用傾向」といった心理特性も調べました。
また6か月後には再テストも行い、行動パターンが一時的なものか、それとも持続的な性質なのかを追跡しています。
では、こうした検証の結果、人々のどんな傾向が明らかになったのでしょうか。