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失敗したり罰を受けたりしても行動を変えない人の科学 / Credit:Canva
psychology

「罰を受けても行動を変えない人」の科学 (2/2)

2025.07.31 11:30:26 Thursday

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私たちの中には「失敗や罰から学べない人」が一定数いる

研究の結果、人々の罰への反応が明確に3つのタイプに分類できました。

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ある人たちは罰を受けるとすぐに原因を突き止め、行動を修正できる / Credit:Canva

1つ目は「Sensitive(敏感型)」。

このタイプの人々は、罰を受けるとすぐにその原因を突き止め、行動を修正します

彼らは明示的な説明がなくても、経験だけから正しい因果関係を見抜くことができます。

2つ目は「Unaware(無自覚型)」。

このグループの人たちは、罰を受けても最初はその原因がわからず、間違った行動を続けてしまいます。

しかし、研究者から「この惑星が危ないんですよ」と説明されると、即座に行動を修正します。

つまり、彼らの問題は“因果推論の失敗”であり、適切な情報が与えられれば学習可能なのです。

3つ目が「Compulsive(固執・強迫観念型)」。

このタイプの人々は、罰を受けてもその原因に気づかず、さらに明示的な説明を受けてもなお、危険な行動を繰り返します。

しかも驚くべきことに、研究チームが参加者に「最も良い戦略は何だと思いますか」と尋ねたところ、彼らはしばしば、それが明らかに間違った選択である場合でも、まさに自分が実践していることを具体的に説明しました。

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一部の人は明示的な説明を受けても行動を変化させない。その傾向は6カ月後も同じだった / Credit:Canva

なぜCompulsiveタイプは行動を変えられないのでしょうか?

研究チームによると、これは「認知と行動の統合の失敗」によるものだとされています。

すなわち、「知っていること」と「実際にやること」を結びつける力が低下しているのです。

これは依存症やギャンブル問題、慢性的な自己破壊的行動と共通する特徴でもあります。

ちなみに、267名のうち、約26%がSensitive型、47%がUnaware型、27%がCompulsive型に分類されました。

そして、この3タイプの分布は、6か月後の再テストでも大きく変化しませんでした。

つまり、罰に対する反応の傾向は単なる気まぐれではなく、「性格に近い安定した特性」である可能性が高いのです。

特にCompulsive型は50歳以上の高齢層に多く、年齢による認知柔軟性の低下とも関係している可能性が示唆されました。

この研究が明らかにしたのは、「罰を与えれば人は学習して行動を変える」という前提がすべての人に当てはまるわけではないという事実です。

社会制度においても、罰金や健康警告、ルール違反への処罰などが「効果的ではない」人たちが一定数存在するのです。

たとえば、繰り返し飲酒運転をする人や、生活習慣病のリスクを知っていても過食を止められない人も、この「Compulsive型」の可能性があります。

そのため今後は、「敏感型」「無自覚型」「固執・強迫観念型」という行動特性に応じて、オーダーメイドな介入が必要になるでしょう。

認知行動療法やコーチング、依存症治療、さらには犯罪予防においても、この分類が活用される可能性があります。

もしあなたや家族、また友人が、自分を傷つけると分かっているのに、その行動を繰り返してしまうなら、それは本人だけではどうしようもない問題なのかもしれません。

誰かの助けが必要です。

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「罰を受けても行動を変えない人」の科学 (2/2)のコメント

ゲスト

どこに助けを求めりゃいいのさ

ゲスト

かと言って言われたら素直に従うだけのロボットも困ってしまいますしね。
今どきは人工知能ですら人の言うこと聞かないこともあるくらいですから、そういうのでいいんじゃないかと思いますよ。
言うことを聞いてくれない人もいる、それだけ理解しておけば十分ですよ。

ゲスト

言えば自己破滅型のこうした性質が淘汰されていないことが驚きです。何らかの利点もあるのでしょうか。

    通りすがり

    「(自然)環境」という外部情報システムは生命個体と比べてはるかに複雑だからね。
    記事の前2者のおよそ75%は人間の社会のスケールでは、合理的なんだけど、最後の固執タイプの重要性は「複雑なシステムはパターンやルールそのものが変わる場合が(希に)ある」という事への種としての対応可能性を担保出来るということだと思うよ。
    固執タイプの行動選択は画一的ではなく、個別の主観で歪められたもので、合理的・客観的ではないが、「エラーを含む処理」と考えれば、彼らは種の選択肢・判断にランダム性を与えてくれている。

    安定した期間では厄介者だが、種というスケールでは、おそらく合理的。
    言い換えれば、善悪の基準(人間の社会的基準)ではおそらく悪だが、種としての最悪(滅亡など)を回避しやすいという意味では必要だった。
    しかし、彼らが集団の重要な意志決定に関わると全滅しかねない。

    K

    「通りすがり」さんも言われているように、変化し続ける環境に対する探索行動を担っているのだと思います。
    コロンブスもマゼランも自己破滅型ではなかったのでしょうか。マゼランの航海の275人の乗組員のうち、わずか18人しか生還できませんでした。

    名前はまだ無い

    淘汰じゃなく、いわば枠にハマらない変異種といことでしょう。
    それはもしかしたら、進化のようなものかも。

    環境に馴染む側じゃなく、新しい環境を必要とする側になっていってるのかもな。

ゲスト

Compulsive型が身近にいたら諦めるしか無いのか

ゲスト

>言うことを聞いてくれない人もいる、それだけ理解しておけば十分ですよ。

そういう話をしているのではないと思います。
人にはこういう特性があり、どうすべきかという話ではないでしょうか。

ゲスト

固執・強迫観念型の対策方法が知りたいね。どうすればこのタイプの人々の行動を修正出来るのか。

ゲスト

彼の行動を変えるために必要なものはペナルティではない、というだけでは?

ゲスト

両方海賊が出る様になったら上に立てるからやってるのでは

ゲスト

このポイントは換金できるんだろうか?
でなければ、ハイスコアを狙うメリットが何もないと言うか、時間や神経を使うだけ損まである

ゲスト

自己破滅型以外だけだと短期的な戦略整合性だけで環境に敏感になりすぎるから
長期的に不利に見えても探索する役割が一定数必要なんでしょう
この機能の犠牲者ともいえる

通り巣鴨

興味深いね。

もう少し掘り下げるなら、「環境情報からパターンを推測する能力」と「他者の意見で行動を変えるか」などを、この発表のテーマである「失敗や罰への反応」の文脈から分離して細分化してもいいかも知れない。
例えば、最後の固執タイプは、得た情報から因果を予測するパターン認知能力が弱いか、予測できても行動の変更方法を自分で構成できないか、持説に固執するために人の意見を拒絶するかあるいは反発するのだと考えられる。
しかし、この「人の意見」に関する要素では、敏感タイプにも同様の「人の意見を聞かない」者が混ざっている場合もあるかも知れない。
敏感タイプは予測能力も行動修正能力も充分なので、「他人の意見に対する感受性」がこのタイプだけが計れていない。

ゲスト

知り合いの息子さんがまさにこのタイプ
高学歴なんで勉強はそれなりにできるんだろうけど
サイフとか鍵とか大事なものも含めて持ち物をすぐになくしちゃう
そこは全然直らないし、本人に直す気があるのか分からない
って親御さん嘆いていた
あの手この手で改善するように取り組んできたけど
どうにもならなくてもう諦めているって
こういうタイプはどうしたらいいんだろうね

ゲスト

この様な人達は集団の中で害になりがちだけどあの人の様にはなりたくないあの人の様な振る舞いはしないでおこうと言う様な多数派の人の反面教師や行動修正を促す役割があるんですね

COMPASS

やってみなくちゃわからねぇだろうがぁ!!!!!
的な?

ゲスト

うちの父親がそう
里親に出されたところがそういうタイプの人だったからだけかもしれないが

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