「指パッチン」で4400℃のプラズマ衝撃波を発生させる"テッポウエビ"
「指パッチン」で4400℃のプラズマ衝撃波を発生させる"テッポウエビ" / Credit:Wikipedia
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「指パッチン」で4400℃のプラズマ衝撃波を発生させる”テッポウエビ”

2020.12.17 Thursday

「最強の生物を考えてみよう」という宿題が小学生時代の夏休みに出されたら、いったいどんな姿を想像するでしょうか?

恐竜のように巨大で力強い生命を思い浮かべる人もいれば、優れた環境適応能力をもつ細菌こそが最強だと考える人もいるでしょう。

あるいは現在繁栄している人間こそが最強と呼ぶべきだと言う人がいるかもしれません。

しかし今回紹介するテッポウエビは、恐竜や細菌、そして人間も存在しないSFのような「遠距離攻撃能力」を持ちます。

巨大なハサミの2つの刃が噛み合うとき、凄まじい衝撃波が生成され、水温は瞬間的に4400℃にも達し、プラズマの閃光きらめく衝撃波が生じます。

衝撃波をまともにくらった小魚やカニは一瞬にしてノックダウン、テッポウエビのエサになるのです。

しかし瀬戸内海の魚市場で1盛り800円で売られているこの最強生物は、いったいどうやって、そんなSFチックな能力を発揮しているのでしょうか?

Science Advances https://advances.sciencemag.org/content/5/3/eaau7765

テッポウエビの腕はショックキャノンだった

テッポウエビの腕は生体衝撃波砲であり生体プラズマ生成器でもある
テッポウエビの腕は生体衝撃波砲であり生体プラズマ生成器でもある / Credit:Science Advances

テッポウエビは生まれながら遠距離攻撃能力は、その巨大なハサミに依存しています。

ハサミの胴体部分の内部は筋肉がギッシリとつまっており、収縮と伸長を組み合わせることで先端部を時速115キロメートルもの高速で閉じることができるのです。

この異常な速度が水中で発揮されると、周囲の水圧が瞬間的に低下して、水中に無数の小さな気泡(キャビテーションバブル)が生じ、膨らんでいきます。

しかしこの気泡の内部は超低圧であり、膨張しきった後は周囲の水を勢いよく巻き込んで急激に崩壊していきます。

このとき、崩壊する水泡の温度は太陽の表面に近い4400℃にも達し、高温のため水の分子は水素と酸素に分離したプラズマ状態になり発光します。

テッポウエビの爪は、この泡の崩壊によって生じる衝撃波を前方に飛ばために最適な形をしており、狙った方向に撃ちだすことができるのです。

衝撃波砲は射程こそ短いものの、テッポウエビが狙う小型の魚やカニにとっては致命的な一撃となります。

しかし強力な武器は、自身を滅ぼす力にもなるでしょう。

核を手にした人類が戦争で使わずにはいられなかったように、テッポウエビの衝撃波砲の矛先も縄張りをかけた同族との戦争に投じられました。

次ページ同族同士の撃ち合いは殺し合いになった

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