罵倒すると身体的苦痛がましになる
椅子の脚に小指をぶつけた時など、思わず「チクショー!」のように汚い言葉を大声で叫んだことはありませんか。
「馬鹿野郎!」や「くそ!」などの汚い言葉は、一般的には口にしない方が良いとされていますが、実はそのように罵倒することで痛みがましになることが分かっています。
英国キール大学のリチャード・ステファン氏(Richard Stephans)らの研究では、こうした大声の罵倒と苦痛の関連を検討しています。
この研究に参加したのは、大学生67名です。
実験では参加者に、5℃の冷水に非利き手を最大で3分間、我慢できるまでつけてもらいました。
この冷水に手をつける方法は、危険が伴うことなく、参加者に適度な痛みを与えることが可能で、痛みに関する実験でよく用いられます。
この時に、参加者は以下の2つのグループに分けられました。
罵倒グループ:手を冷水につける間、罵りの言葉(チクショーなど)を一定のリズム、大きさで繰り返し発声する
大声グループ:手を冷水につける間、椅子に関連する言葉(四角いや固い)を一定のリズム、大きさで繰り返し発声する
その後、水に片手をつけたことで感じた主観的な痛みを回答してもらいました。
さて、汚い言葉を大声で叫ぶことで感じる痛み、我慢できる時間は変わったりするのでしょうか。
実験の結果、「馬鹿野郎!」などの罵る言葉を大声で言った人は、ただ大声を出した人と比べて、脈拍が早くなっており、主観的な痛みが小さく、長い時間我慢できることが分かりました。
この結果は、大声で罵倒することが身体的苦痛に対する耐性を高めることを示しています。
確かにこうした事実はすでに実感を持っている人も多いでしょう。
しかしここからはあまり聞いたことのない話になるかもしれません。
興味深いことに罵倒することで得られる効果は身体的な痛みへの耐性だけではないことがわかっているのです。
なんと罵倒は孤独や不安などの心理的な苦痛に対しても耐性を強くするというのです。