進化の速度「進化可能性」が注目されている

ダーウィンが『種の起源』を発表した19世紀後半、自然界に存在する多様な生き物たちが、神による創造ではなく「自然選択」というしくみによって形づくられてきたという考え方は、社会に大きな衝撃を与えました。
自然選択とは、生き物が子孫を残す過程でわずかな違い(変異)が生じ、その中で環境に合った特徴を持つ個体が生き延びやすく、やがて集団全体がそうした特徴をもつように変化していくという仕組みです。
これは当時の常識から見ると極めて斬新でしたが、その後、メンデルの「遺伝の法則」が再発見されて「変異」が遺伝子を通じて親から子へ受け継がれることが明らかになりました。
さらに20世紀にはDNAが遺伝情報の実体であるとわかり、分子生物学が進化論と結びつくことで「モダン・シンセシス(現代的総合説)」が確立され、突然変異や遺伝的浮動、遺伝子の流入・流出など、複数の要因が組み合わさる進化の枠組みが整備されてきました。
ところが近年、そうした「どうやって進化するか」だけでなく、「進化そのものがどれくらい起こりやすいか」という“進化可能性(Evolvability)”の重要性が注目を集めています。
実際、ウイルスや細菌が薬剤耐性を獲得するスピードの速さを思い浮かべると、ごくわずかな変化が驚くほど速やかに集団へ広がってしまう現象の背景に、「進化可能性」が深く関わっていると考えられています。
長い進化の歴史の中で、環境が何度も大きく揺らいだり短期間で変わったりした場合、進化というプロセス自体が「将来の変動に備える形」に変化していく可能性が指摘され、まさにそれが「進化が進化する」というテーマの核心となっています。