胎児も「味」を感じている?
当然ながら、母親のお腹の中にいる胎児は食べ物を直接食べることができません。
しかしながら健康にすくすくと育つためには、胎児にも十分な栄養が必要です。
そこで胎児は母親の体を通して栄養をもらっています。
その主な栄養源の運び役を担うのが「臍帯(さいたい)」です。
臍帯は胎児と胎盤(つまりは母体)とをつなぐヒモ状の器官を指し、一般的には「へその緒」の名前で知られています。
へその緒は胎児の生存と成長に欠かせない器官であり、ここを通って母体から栄養分を含む血液や酸素が胎児へと送られるのです。
これで胎児はお腹の中ですくすくと成長することができますが、その一方で、胎盤内を満たしている羊水には母親が摂取した食物の化学物質が溶け込むことが知られています。
胎児が発達中の口から羊水を飲み込むことを踏まえると、以前から「胎児は羊水を通じて母親が食べた物の味を感じ取っているのではないか」と考えられていたのです。
しかしこの仮説を証明する研究はこれまでなされてきませんでした。
その中でダラム大学は2022年に「胎児の表情を読み取る」という大胆な方法でこの謎を解き明かすことにしたのです。