「不適応性白昼夢」とは何か?

「白昼夢(daydream)」という言葉は、楽しい空想やひとときの妄想というイメージがありますが、「不適応性白昼夢(maladaptive daydreaming、以下MD)」はその想像を大きく超えた状態を指します。
MDとは、過剰で没入的かつ鮮明な妄想に長時間ふけり、現実生活に支障をきたす心理現象です。
登場人物や物語を勝手に作り上げ、まるで頭の中にもう一つの世界を築くかのような状態に陥ります。
現実の人間関係よりも、空想の中のストーリーに親しみを感じてしまうことも珍しくありません。
たとえば、
・通学や通勤の間、ずっとファンタジー世界に没頭する
・空想の中の自分はスーパースターやヒーローである
・音楽をきっかけに自動的に空想が始まり止められない
といった特徴が見られます。
このような現象は、不安障害、うつ病、ADHD、トラウマなどと併発することも多く、単なる「夢見がちな人」として見逃されがちです。
しかし実際には人口の約2.5%がこのMDによって臨床レベルの支障を抱えているとの報告もあります。
MDはしばしば、心の痛みや現実のつらさから自分を守るための無意識的な戦略として働きます。
とくに「自分は無力だ」「現実の自分に価値がない」と感じている人ほど、空想の中で自分を特別な存在に仕立てることで、自尊心を保とうとする傾向があります。
このような自己イメージの防衛に関係するのが、今回注目されたナルシシズム(自己愛傾向)なのです。