「楽しいことは自然に起きる」という誤解
「幸福でない」と感じている大人の多くは、「楽しいことは予定しなくても自然に起きるもの」と信じています。
学生時代のように、気の合う友人と偶然出かけたり、ふとした出来事で笑い転げたり、そうした体験が自動的に湧いてくると期待しているのです。
しかし、マイク・ラッカー博士はこの考えを「現代人にとっては幻想」だと断じます。
忙しくなればなるほど、人の生活は他人の要求・仕事の締切・スマホの通知などに支配され、自分の“楽しいこと”を後回しにしがちだからです。

そして、楽しさがないまま日々を過ごしてしまうと、やがて次のような“幸福の罠”に落ちてしまいます。
それが、「自分は幸せか?」と問うことで、かえって幸せから遠ざかってしまうという現象です。
幸福を“評価する対象”として捉えると、人は無意識に自分の生活に点数をつけ始めます。
そして完璧ではない現実に不満を抱くようになり、「今を楽しむ」力を失っていくのです。
ここでラッカー博士は、幸福よりも「楽しさ(fun)」に注目することをすすめます。
なぜなら楽しさは「今この瞬間」にしか存在しない感情だからです。
幸福が人生の総合評価だとすれば、楽しさはその場のライブ体験です。
今の生活に“楽しい瞬間”が少しでもあれば、人は自然と前向きになれます。
では、どうすれば忙しい生活の中に楽しさを取り戻せるのでしょうか?