なぜ衣類は黄ばむ?新しい漂白法は「青色LED」を使う!?
シャツの黄ばみの主な原因は、汗や皮脂に含まれる成分にあります。
汗や皮脂に含まれる油分、特にスクアレンやオレイン酸は、肌に直接触れる脇や襟元、袖口などに染みつきやすくなります。
また、トマトやオレンジジュースに含まれるβカロテンやリコペンといった天然色素も、食べこぼしや飲み物のシミを通じて生地に入り込み、やがて黄ばみの原因となります。
これらの成分は、空気に触れたり、洗濯やアイロン、日常の摩擦や熱によって酸化しやすく、時間が経つほどに生地を黄色く変色させてしまうのです。
今まで黄ばみ対策として最も一般的だったのは、漂白剤や過酸化水素を使った方法です。
これらの薬剤は強い酸化力を持っており、しつこい汚れも分解してくれますが、その反面、生地自体を傷めやすいという問題があります。
生地が弱くなったり、破れやすくなってしまうだけでなく、シルクやウールなどのデリケートな素材には使えません。
また、強い薬剤や大量の水、加熱などが必要なため、環境負荷も大きくなってしまいます。
紫外線(UV)照射も、漂白剤を使わない方法として一部で検討されてきましたが、こちらも生地の劣化や新たな黄色い色素ができてしまうリスクが残ります。
こうした現状を踏まえ、旭化成の研究チームは、これまで合成樹脂の黄ばみ除去に成功していた高出力の青色LEDライトを衣類の黄ばみ除去に応用できないかと考えました。
研究の目的は、漂白剤やUV照射よりも生地にやさしく、環境にも配慮した新しい黄ばみ対策を開発することでした。
本当に光だけで、汗や皮脂、食べ物由来の黄ばみが落ちるのか、その科学的根拠と実用性を明らかにするために、さまざまな実験が行われました。
まず、黄ばみの原因となるスクアレン、βカロテン、リコペンなどの成分をガラス容器に入れ、強い青色LED光(波長445nm、1.25W/cm²)を3時間照射しました。
その結果、すべてのサンプルで色が薄くなり、元の色素が無色の物質に変わっていることが確認できました。
次に、白い綿の布にスクアレンを塗りつけて加熱し、人工的な黄ばみを作成しました。
この布を、青色LEDライトで10分間照射、紫外線ライトで10分間照射、過酸化水素溶液に10分間浸すという3つの方法でそれぞれ処理し、漂白効果を比較しました。
さらに、コットンだけでなく、シルクやポリエステルといったデリケートな素材でも同様の処理を行い、また、食べ物由来のオレンジジュースやトマトジュース、加齢オレイン酸由来の黄ばみにも挑戦しました。