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海の近くに住むと寿命が延びていた、内陸の水辺は逆効果の場合も?

2025.07.30 07:00:17 Wednesday

「水辺の近くに住むと健康になる」

そんな噂を聞いたことがあるかもしれませんが、それは海辺に限っての話かもしれません。

米オハイオ州立大学(OSU)の最新研究で、海の近くに住む人々は、一般的な平均寿命よりも長く生きている傾向が明らかになりました。

その一方で、意外なことに、内陸の川や湖に近い都市住民は平均寿命がやや短くなる傾向が見られています。

ただし、農村部の川や湖の近くに住む人では寿命が延びる可能性が指摘されており、一概に内陸の水辺近くが悪いわけではないようです。

では、どうしてこのような違いが見られたのでしょうか?

研究の詳細は2025年5月29日付で学術誌『Environmental Research』に掲載されています。

Could living near water mean you’ll live longer? https://news.osu.edu/could-living-near-water-mean-youll-live-longer/
Unveiling complexity in blue spaces and life expectancy https://doi.org/10.1016/j.envres.2025.121981

海の近くに暮らすと寿命が延びる理由とは?

研究チームは今回、アメリカ本土の6万6000以上の国勢調査区を対象に、寿命と「海や水辺への近さ」との関係を調査。

その結果、海岸からおおむね50km以内に暮らす人々は、平均して寿命が1年以上長くなっていたのに対し、内陸の水辺(面積10〜20平方km以上)に近い都市住民では、逆に寿命がやや短くなる傾向が見られたのです。

「全体的に見ると、沿岸地域の住民はアメリカの平均寿命である79歳より1年以上長く生きる傾向があり、内陸の川や湖の近くにある都市部に住む人々は、平均寿命が約78歳とやや短くなる傾向が見られました」と研究者はまとめています。

では、海辺の近くに住むと寿命が延びるのはなぜでしょうか?

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海のそばでの生活が寿命に良い影響をもたらす最大の理由は、まず気候の穏やかさです。

調査によると、海に近い地域は猛暑日(最高気温35℃以上)や極寒日(最低気温−5℃以下)が内陸の都市部に比べて少なく気温の変動も比較的穏やかでした。

これにより、心臓病や高血圧などの疾患リスクが抑えられ、結果として死亡率の低下につながっていると考えられます。

また、空気の清浄さも大きな要因です。

沿岸部は内陸に比べてPM2.5(微小粒子状物質)や煙害の発生が少なく、総じて大気環境が良好でした。

これは呼吸器系や心血管系の健康維持に直結します。

さらには運動やレクリエーションの機会にも差があります。

海岸地域では散歩やジョギング、釣りや海遊びといったアクティブな活動がしやすく、身体活動量の増加やストレス緩和が期待されます。

こうした活動はメンタルヘルスの改善にも寄与し、長寿に貢献する要因となります。

これらの恩恵に加えて、所得水準や医療アクセスの良さ、地形の平坦さによる交通の利便性など、複数の社会的・物理的環境が複合的に働いていることが、解析モデルからも示されました。

次ページ都市部の川や湖の近くでは、逆に寿命が縮む?

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