なぜ排卵期はいい匂い?

動物の世界では、フェロモンという「におい物質」が異性へのメッセージとして重要です。
特に、動物が相手と仲良くなったり、赤ちゃんを産んだりする時期には、このフェロモンが大きな役割を果たします。
例えばサルの仲間は、相手が妊娠できる時期をにおいで感じ取り、仲間同士でコミュニケーションを取っています。
人間にも同じような仕組みがあるのではないかと考える研究者は以前からいました。
実際、男性は女性のにおいを、排卵期(妊娠しやすい時期)に一番魅力的だと感じやすいことが分かっています。
特に、女性がホルモンを使った避妊薬を飲んでいると、その魅力的なにおいが消えてしまうことも知られています。これは、女性ホルモンがにおいの魅力に深く関係している証拠です。
なぜ排卵期に女性からいい匂いがするのか?
理由のひとつは「生殖の効率」を高めるためだと考えられています。排卵期は、女性が最も妊娠しやすい時期。このタイミングで「魅力的な匂い」を発することで、より良いパートナーに出会い、妊娠の可能性を最大化するという仕組みです。言い換えれば、匂いは「いまがベストタイミング」という無意識のサインとして、進化の過程で自然と組み込まれてきたのです。
しかし、これまでの研究では「女性のどんな成分が、男性にとって魅力的な匂いを生み出しているか」がはっきりしていませんでした。
つまり、排卵期の女性からどんな物質が出ていて、それが男性の気分や体にどんな影響を与えるのかは謎のままでした。
そこで東京大学の研究チームは、この謎に挑戦しました。
「排卵期の女性の体から出る匂いにはどんな成分が含まれているのか?」
「その成分が男性の気持ちにどう影響するのか?」
を明らかにすることが目的でした。
この謎が解ければ、将来的にその成分を活かした香水やリラックス製品ができるかもしれません。