世界最古の指紋を残したのは誰?
スペインの考古学チームは2022年に、サン・ラサロ岩陰遺跡のムスティエ文化層(中期旧石器時代)から、一見ただの石に見える花崗岩の小石を発見しました。
この石は、他の打撃石(ハンマーストーン)と大きさも形状もまったく異なり、表面には何らかの道具として使われた摩耗や損傷などの痕跡は検出されていません。
その一方で、奇妙な特徴が見られました。
石のサイズは縦21.4cm・横11.3cm・高さ7.6cmであり、表面に3つの小さな窪みが並び、中央には赤土でつけられた小さな点が一つありました。
実際の画像がこちら。

そしてチームが赤土を分析したところ、これは指先の指紋であることがわかったのです。
年代測定によると、この指紋は約4万3000年前につけられたものであり、現時点で世界最古の指紋の証拠となっています。
さらに詳細な画像分析から、この指紋をつけた人物は成人男性のネアンデルタール人である可能性が極めて高いと結論づけられました。
実際にこの地域はネアンデルタール人が暮らしていたことで知られ、他方でホモ・サピエンスの証拠は検出されていません。
こうした点からも、指紋を残したのはネアンデルタール人と見て間違いないようです。
加えて、赤土の指紋は偶然に付着したものではなく、指先で意図的に塗布されたものであることが化学分析から明らかになっています。
酸化鉄系の赤土が指の腹によって均一な力で押し付けられていることが示され、この人物が意図して指紋を残したことが窺えるのです。
では、ネアンデルタール人はこの石に何を見ていたのでしょうか?