AIが暴いた「人類は獲物だった」証拠
研究チームが着目したのは、タンザニア・オルドヴァイ峡谷で見つかった2体のホモ・ハビリス化石です。
一つは約185万年前の幼い子供「OH 7」で、もう一つは約180万年前の成人個体「OH 65」でした。
この2体の骨には、目視でも分かる“歯型”が残っていましたが、「どの動物によるものか」は、これまで長年はっきりしませんでした。
チームは、現代のヒョウ、ライオン、ワニ、ハイエナ、オオカミといった肉食獣が残す歯型の写真を1,496枚も集め、それをAI(ディープラーニング)で学習させました。
そして最新のAIモデル(ResNet-50やDenseNet-201など)に、ホモ・ハビリス化石の歯型画像を読み込ませて分析。
すると2つのモデルがともに「骨に残された歯型は、90%以上の高確率でヒョウによるもの」と判定したのです。
特に、骨に残る歯型が三角形のくぼみで、現生ヒョウのサンプルと一致していた点が決め手となりました。
もしハイエナのような骨を噛み砕く動物が咬んでいたなら、化石骨はもっとバラバラになっていたはずです。
しかし、損傷は比較的軽微で、ヒョウが肉を食べる際に残す特徴と完全に合致していました。
このことは、当時のホモ・ハビリスが「捕食者として頂点に立っていた」のではなく、むしろヒョウなどに狙われる“弱い立場”だった可能性を示唆しています。