妊娠の仕組みと、“ピル”と“緊急避妊薬”が働くタイミング
なんとなくやったら確率で妊娠してしまう、という雑な認識の人もいるかも知れませんが、実際妊娠が成立するには、意外と複雑なタイミングと偶然が必要になってきます。
まず、女性の体は月に一度「排卵」と呼ばれるタイミングで卵子を放出します(排卵:卵子が卵巣から飛び出す現象)。
この排卵が起きた直後から、卵子が受精できる期間はわずか24時間程度しかありません。
また、精子は女性の体内で最大5日間しか生存できません。
そのため、妊娠するためには排卵後24時間以内に性交するか、排卵の「数日前」に性交し、精子が卵子を待ち構えることでしか妊娠することはできません。
このように、妊娠はいつでも起きるわけではなく「排卵日を基準にした6日間(排卵日の5日前から排卵日当日まで)」が“妊娠可能な期間”なのです。
俗説で「安全日」というものを聞いたことがあると思いますが、これはこの排卵のタイミングを避けて性交すれば妊娠しにくい、という考え方に基づきます。確かに理論上この約6日間を避ければ妊娠を避けることは出来ますが、実際は排卵日の正確な予測は難しく、ストレスや体調によるずれも大きいため、「安全日を狙っても上手くいかない」ことは論文でも強調されています。
では、避妊薬はこのプロセスのどこに作用して妊娠を防いでいるのでしょうか?
まず、通常のピル(経口避妊薬)は、毎日服用することで体内のホルモンバランスを人工的に調整し、一時的に妊娠時に似た環境を作り出すことで排卵そのものを起こさせないようにする薬です。
具体的には、毎日ごく少量の女性ホルモン(エストロゲンやプロゲスチン)を継続的に体に補給し、脳下垂体から分泌される「排卵を促すホルモン」の働きを抑えて卵子の排卵をストップさせます。
また、頸管粘液の粘度を高め、精子の子宮内への侵入を妨げたり、子宮内膜を薄くして受精卵の着床を妨げたりする三重の作用によって、正しく使えば99%以上の避妊率を誇ります。
一方、緊急避妊薬ノルレボ錠(アフターピル)は、性交後に“即効性”で作用します。
これは女性ホルモンのひとつである“黄体ホルモン(プロゲステロン)”に似せて人工的につくられた「レボノルゲストレル」という成分を、1回だけ高用量で服用します。
これによって体に緊急で「排卵しなくていい」というサインを送り、もし排卵前であれば排卵を遅らせ、妊娠を防ぐことができるのです。
もしも、排卵がすでに起きて24時間を過ぎているのなら、どちらにしろ卵子の受精能力は急速に低下しているためリスクは大きく下がります。
こうした作用で妊娠を防いでいるため、性交が排卵直後から24時間以内に重なっていた場合には、緊急避妊薬であっても完全に妊娠を防げない可能性が高くなります。
そのため、緊急避妊薬は性交後24時間以内の服用で90~95%、25~48時間以内では約85%、49~72時間以内では約58%と高い妊娠阻止率を示していますが、約8300例の利用者を大規模に追跡調査した結果、全体の約1~2%程度は避妊に失敗していることが示されています。
これらの数字は、服用タイミングや個人差による排卵ずれが影響し、正しく服用しても妊娠することがあることを示唆しています。
こうして作用だけ効くと、決められたタイミングで飲み続けなければいけない通常のピルよりかなり使いやすく、効能はあまり変わらないという印象を受けます。
なら、なぜノルレボ錠は”緊急時の最後の手段”とされるのでしょうか? コンドームの代わりのように常用すると何が起きるのでしょうか?