コメント欄はなぜ「常連さん」に支配されるのかを解明
コメント欄はなぜ「常連さん」に支配されるのかを解明 / Credit:Canva
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コメント欄はなぜ「常連さん」に支配されるのかを解明 (2/3)

2025.12.12 18:00:30 Friday

前ページ常連さんがいるコメント欄は荒れやすい?

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一部の常連さんは荒れたコメント欄が大好物で連投する

一部の常連さんは荒れたコメント欄が大好物で連投する
一部の常連さんは荒れたコメント欄が大好物で連投する / 縦軸が人数、横軸が書き込んだ回数。ほとんどの人はそもそも書き込まないか書き込んでも少数にとどまるが、ごく一部の人は大量に書き込んでいることがわかります。/Credit:Disentangling participation in online political discussions with a collective field experiment

研究チームはSNS掲示板「Reddit(レディット)」上に、政治について議論するための6つの非公開コミュニティを新設しました。

そこに事前アンケートで募集・確認した参加者520名を無作為に割り当て、4週間にわたって計20個の政治的トピックについてオンライン討論をしてもらったのです。

結果、520人から合計5819件のコメントが投稿されました。

早速研究者たちは分析にとりかかります。

するとまず、多くの人が一度も発言しなかったという事実が見えてきました。

全参加者520名のうち、約36%(189名)は最後までコメントを投稿せず沈黙を貫いていたのです。

一方、最も多く投稿した人は4週間で114件ものコメントを残しており、発言数は人によって極端に異なっていました。

また誰が積極的に発言するかには偏りがあり、政治への関心が高い人や男性はコメント数が多い傾向も観察されました。

議論を主導する「常連」層と、ロム専に徹する沈黙層とに二極化する――これがコメント欄における基本的な構図のようです。

では、誰が沈黙し誰が饒舌になるのかを分けた要因は何だったのでしょうか。

分析の結果、鍵を握っていたのは議論の「空気」をどう感じたかでした。

議論の場が「攻撃的だ」「無礼だ」「建設的でない」と主観的に感じた人ほど、自分はコメントせずに読むだけ(いわゆる「ロム専」)に回る傾向が強いことが示されました。

一方で皮肉なことに、同じように議論の空気を「荒れている」と感じたにもかかわらず書き込み続けた少数派も存在し、そうした人々はむしろコメント数が増える傾向を示しました。

まさに「毒」が常連を増やすパラドックスと言えるでしょう。

このねじれ現象は、人間がストレスを受けたときの反応の違いにも例えられます。

プレッシャーに敏感な人はストレス源から逃れようと黙り込む一方、ストレス耐性が高い人は刺激として捉え、積極的に関与し続けることがあります。

コメント欄でも同様に、「荒れた空気」にストレスを感じた人ほど離脱し、逆にストレスをあまり感じない人だけが残ってさらに発言を重ねる結果となりました。

現実のコメント欄では、この少数派の声ばかりが目立ってしまうのです。

では、こうした偏りを是正する手立てはあるのでしょうか?

研究チームは試験的に2種類の介入策を講じ、その効果を検証しました。

一つは経済インセンティブ(金銭による動機付け)で、参加者が1日に1回以上まじめなコメントを投稿するごとに2ドル(数百円程度)相当のギフト券を支払うというものです。

もう一つは「議論は冷静かつ礼儀正しく行いましょう」「嫌がらせや差別的発言は避けましょう」といった規範メッセージを掲示板上部に表示し、投稿前にマナーを意識させる工夫で、自動のスパム対策なども組み合わせました。

結果はどうだったでしょうか。

まず金銭インセンティブについては、確かに参加の偏りが少し小さくなる効果が見られました。

しかしその効果は限定的で、依然として熱心な常連が優勢である構図自体は崩せませんでした。

一方、礼儀に関する注意書きを示すモデレーション介入の方は、残念ながら参加の偏りを縮める効果は確認できませんでした。

次ページコメント欄は常連さんの声を実態以上に大きく響かせる

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