不倫する人は、どんな思考パターンを持つのか
まずストレイン理論の観点では、不倫が苦しい状況や嫌な感情をしのぐための行動として語られる場面が多く見られました。
投稿の中で引き金として挙げられたのは、職場のストレス、金銭面の不安、家庭の負担といった生活上の圧力でした。
また、関係の中の問題も同じくらい強く関わっており、親密さの欠如や性的な不満が続く状況が、不倫を後押しする形で語られていました。
さらに研究が示したのは、不倫が古いストレスを消すどころか、二重生活の不安や罪悪感、発覚の恐怖といった新しいストレスを生みやすい点です。
そして、その新しいストレスから一時的に逃れるために、かえって不倫が続いてしまうような循環が語られていました。
次に、不倫する人は、「発覚したときの不利益を避けるために行動を細かく調整する」ことも分かりました。
例えば、使い捨ての電話や秘密のメールを使う、知り合いに会いにくい場所で会うなど、発覚の確率を下げる工夫が挙げられています。
さらに、家ではいつも通りを装ったり、むしろ配偶者に前より優しくしたりして、疑いの芽を摘もうとする語りも見られました。
場合によっては、相手の直感を揺さぶって「気のせいだ」と思わせるような言い方、いわゆるガスライティングに踏み込んだ例も語られていました。
発覚が近づいたり発覚後になったりすると、今度は結果の深刻さを小さくする方向に戦略が変わり、軽い内容だけを認めて核心を隠すような告白の仕方が確認されています。
最後に、不倫をした人は、「自分は悪い人間ではない」と思い続けるための正当化を使っていることも分かりました。
よく見られたのは責任の否認で、特に男性の投稿では、生物学的な欲求といった形で本能の問題として語る例がありました。
被害者の否認としては、配偶者が冷たい、性を拒むといった語りで相手を悪者に置き、自分の行動をやむを得ない反応に見せる形が見られました。
また、バレなければ害はない、告白しないのは相手を守るためだ、という理屈が使われています。
ここで興味深いのは、隠蔽の工夫が進むほど相手が気づかない状況が保たれ、「誰も傷ついていない」という自己正当化が強まりやすい点です。
これらは全て、犯罪加害者の思考パターンと似たものです。
もちろん、この研究にも限界はあります。
オンライン掲示板の自己申告に基づく質的研究であるため、すべての不倫当事者にそのまま当てはめられるとは限らず、投稿者の身元や語りの真偽を確かめられないのです。
それでも、この研究の意義は、不倫を道徳の話だけで終わらせず、ストレス、リスク管理、自己正当化という要素に分けて、人が一線を越えるときにどんな語りが組み立てられやすいかを見える形にしたところにあります。
また、犯罪学の理論は犯罪だけでなく、合法でも人を傷つける行為にも同じ骨格が現れ得ることを示し、犯罪者の隠蔽や正当化を理解する手がかりにもなり得ることが分かりました。




























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