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psychology

ASDと非ASDは表情の作り方が異なっており、これがコミュニケーションしづらい原因の可能性 (2/2)

2026.01.24 18:00:37 Saturday

前ページ「自分の動き」を基準に相手を見てしまう

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「目が笑ってない」表情で起きる感情のすれ違い

膨大なデータを解析した結果、両グループは同じ感情であっても、顔のどの部分を重点的に動かすかという「傾向」に、明確な違いが確認されました。

最も顕著な違いが見られたのは「怒り」の表情です。

定型発達の人が怒りを表現する場合、眉の動きが中心的な役割を果たしていました。

一方で、ASDの人は眉の動きが少なく、その代わりに「口元」を動かすことで怒りを表現する傾向がありました。

つまり、定型発達の人が相手の目元(眉)に注目して怒りのサインを探そうとすると、ASDの人が発している口元のサインを見逃してしまう可能性があるのです。

「喜び」の表情においても、興味深い違いが見つかりました。

一般的に、定型発達者の自然な笑顔は、口角が上がると同時に、目の周りの筋肉も動く(目が笑っている)ことが特徴とされています。

しかし、ASDの人の笑顔は、定型発達の人に比べて口角の動きが控えめで、目元の動きも少ない傾向がありました。

これは定型発達者から見ると笑顔が控えめで、目が笑っていない、あまり喜んでいないと受け取られる可能性がありそうですが、これがASDの人の自然な喜びの表現パターンであることを示唆しています。

また、「悲しみ」の表情では人は「へ」の字口を作ろうとしますが、 定型発達者はこのとき「口角を下げる」傾向があるのに対し、ASDの人は上唇を引き上げる独特な動きで「へ」の字を作る傾向がありました。

表情のヒートマップ/Credit: Keating et al., Autism Research (2026),CC BY 4.0

このように、ASDの人々の表情は、定型発達の人々とは「使用する筋肉」や「表現の力点」が異なっており、 研究チームはこのパターンの違いこそがお互いの感情を読み違えてしまう大きな要因の可能性があると考えています。

さらにこの研究は、もう一つ重要な発見をしています。 それは「アレキシサイミア(Alexithymia)」と呼ばれる、自分の感情を認識したり言葉にしたりするのが苦手な特性についてです。

これまでの研究では、ASDの人の表情は「曖昧で、感情の区別がつきにくい(だから能力が低い)」と言われることがありました。 しかし今回の解析で、表情が曖昧になってしまう(怒っているのに笑顔が混ざるなど)原因は、ASDそのものではなく、併発している「アレキシサイミア」にあることが突き止められました

この結果が意味することは重要です。 「アレキシサイミア」を持つ人は、ASDか定型発達かに関わらず、表情の区別が曖昧になります。 しかし、アレキシサイミアを持たないASDの人の表情は、決して曖昧ではありませんでした。 彼らは明確な表情を作っていましたが、それは定型発達者とは異なる独自のパターンで作られていたのです

つまり、「表情が上手く作れない」のはアレキシサイミアによる影響ですが、これはASDであるかは関係なく定型発達者でも起きる問題であり、ASDの影響で起きていたのは「表情が定型発達者とは違う」ということだったのです。

この2つの違いが今回の研究で区別して示されたのです。

これらの結果から、研究チームは「コミュニケーションの課題は一方的なものではない」と結論づけています。

ASDの人がコミュニケーションを取ることが難しい背景は「表情パターンの作り方の違い」に原因があり、これはASD側だけの問題ではなく、定型発達者もまた、ASDの人の表情を正しく読み取れていない「双方向の問題」の可能性があるのです。

これは私たちが他人の表情を読み取るとき、無意識に「自分と同じルールで相手も動いているはずだ」という思い込みから生じる問題なのです。

研究を率いたクック教授は、この現象を「お互いに異なる言語(different languages)を話しているようなものだ」と表現しています。

今回の実験は「意図的に作った表情」を対象にしており、日常生活における「自然な表情」でも同じことが言えるのかは今後の課題です。

それでも、表情という「言葉」の違いを理解し、お互いに歩み寄ることができれば、社会のすれ違いを減らす大きな一歩となるでしょう。

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