なぜ排卵期に「独創性」が高まったのか?
では、なぜ排卵期に独創性が高まるのでしょうか。
これまでには、排卵期の創造性の高まりを、進化的な観点から説明する考えもありました。
創造性は知性や柔軟な思考力を示すサインになりうるため、妊娠可能性が高い時期に創造的な表現が高まることは、パートナーを引きつけるためのシグナルなのではないか、という考えです。
しかし今回チームは、もっと直接的な体の仕組みに注目しました。
それが「生理的覚醒」です。
ここでいう覚醒とは、必ずしも性的興奮を意味するものではありません。
心拍や汗腺活動、交感神経の働きなどを含む、体がやや活性化した状態のことです。
チームは、参加者が課題に取り組んでいる間、利き手ではない手の指にセンサーを取り付け、皮膚電気活動を測定しました。
これは、交感神経の活性化に伴うごく小さな汗腺活動の変化を読み取る方法です。
すると、排卵期には非妊娠可能期よりも、生理的覚醒のピークが多く見られました。
さらに統計解析では、この生理的覚醒の増加が、排卵期と独創性の高まりをつなぐ要因になっていることが示されました。
興味深いのは、参加者自身は「今日はいつもより元気だ」「気分が高い」「性的に興奮している」とは報告していなかった点です。
つまり、本人が自覚していなくても、体のレベルでは排卵期に反応しやすくなっており、その状態が発想の独創性に影響していた可能性があります。
チームはさらに、排卵期のセッションの1つで、参加者に10分間リラックスしてもらう実験も行いました。
参加者はソファで休み、リラックス効果のある落ち着いた音楽を聴きました。
その結果、身体の覚醒は低下し、同時にアイデアの独創性も通常の排卵期より下がりました。
この結果は、排卵期の独創性上昇が、生理的覚醒と関係しているという考えを後押ししています。
ただし、今回の結果は「女性は排卵期にあらゆる面で創造的になる」と示したものではありません。
測定されたのは、あくまで拡散的思考課題におけるアイデアの独創性です。
芸術的才能、知能、仕事の成果、創作能力全般を測ったわけではありません。
また、リラックス介入は身体の覚醒を下げた一方で、気分にも影響していた可能性があるため、結果の解釈には慎重さが必要です。
それでも今回の研究は、創造性が純粋に頭の中だけで生まれるものではなく、体の状態とも深く結びついていることを示しています。
私たちの発想力は、意識していない体内の変化によって、静かに揺れ動いているのかもしれません。
排卵期に生まれる「ちょっと変わったアイデア」は、脳だけでなく、体全体が作り出している小さな創造性のサインなのです。



























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