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電子タバコによる呼吸器疾患の謎が一部解明される

2019.09.09 Monday

Credit: pixabay

Point

■電子タバコによる呼吸器疾患を患った患者の肺の中から、脂質分を貧食したマクロファージ(lipid-laden macrophage)が発見された

■電子タバコによる呼吸器疾患はリポイド肺炎に類似しているが、異なる点もあり同一と断定することはできない

■lipid-laden macrophageに含まれる成分と電子タバコのリキッドに含まれる成分との関係性が、症状を引き起こしている可能性も

「昼間の異常な眠さ」はアルツハイマーの初期症状である可能性

電子タバコ「VAPE」の喫煙による呼吸器疾患の被害。しかしその詳細については、これまで解明されていませんでした。

しかし米ユタ大学健康学部のスコット・アベレッグ氏らの研究で、患者の肺の中から、脂質分を貧食したマクロファージ(lipid-laden macrophage)を大量に含んだ大型の免疫細胞を発見。

論文は9月6日付けで「New England Journal of Medicine」に掲載されています。

Pulmonary Lipid-Laden Macrophages and Vaping
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1912038

油滴るマクロファージ

肺に不調を感じた電子タバコユーザーがまず医者に訴えるのは、乾いた咳、胸の痛み、息切れです。加えて、腹痛、吐き気、嘔吐や、時には、発熱、全身の痛み、大量の寝汗を生じる場合もあります。

患者は酸素の吸引などによる補助ケアを受け、症状が深刻な時は抗炎症ステロイドの処方を受けます。症状が軽い場合は5〜7日間ほどで改善しますが、症状が重い場合には回復に数週間を要することもあります。深刻化すると、集中治療室で生命維持装置が必要になる場合もあります。

患者の肺を映したレントゲン写真はまるでウイルス性や細菌性の肺炎のように見えますが、実際にテストしてみると陰性と出ます。そこで、これまでは、類似した呼吸器疾患のすでに知られている原因が見つからないことと、電子タバコの喫煙歴があることを組み合わせて、診断する他ありませんでした。

アベレッグ氏らは、ソルトレイクシティ大学病院に通う患者6名のうち、全員からlipid-laden macrophageを特定しました。これらの細胞は、肺の小さな部分に噴出させた液体を回収して調べる「気管支肺胞洗浄」という処置を施したサンプルの中から見つかりました。

マクロファージは、炎症が起きている箇所に集まって、そのがれきを回収する役割を持つ免疫細胞の一種です。オイルレッドOと呼ばれる染色液に漬けたところ、これらの細胞から油の滴が染み出している様子が観察されました。

電子タバコを喫煙する患者の肺から見つかったlipid-laden macrophage / Credit: Andrew Hansen, MD, Jordan Valley Medical Center

そう頻繁に見られるものではないマイクロファージが存在するということは、何らかの理由があるはずです。アベレッグ氏は、「電子タバコによって肺の中に侵入したがれきを、マクロファージが掃除しているのだろうか?」と考えました。

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