リポイド肺炎に似ているけれど…
アベレッグ氏らが最初に調べた患者は、リポイド肺炎(lipid-laden macrophageが肺胞腔内に出現することを特徴とする肺炎)と診断された21歳の男性でした。この肺炎は、スクリーニング検査で診断されます。
そこで、電子タバコによる呼吸器疾患が疑われる他の患者5名にも同様のスクリーニング検査を行ったところ、全員が陽性であることが明らかになりました。論文の出版後も、症例は10例にまで増えたそうで、新しいケースが週次で更新され続けています。
とはいえ、電子タバコによる呼吸器疾患がリポイド肺炎の一種であるかどうかについては、疑問が残ります。2つの症状は似ている一方で、違いもあるからです。
電子タバコによる呼吸器疾患と異なり、リポイド肺炎は、油分ベースの便秘薬などを誤って肺に吸い込んだ高齢者によく見られます。また、典型的なリポイド肺炎と電子タバコによる呼吸器疾患は、レントゲン画像の見え方も違います。
アベレッグ氏は、lipid-laden macrophageが電子タバコによる呼吸器疾患を発症した患者に特有のものなのか、それとも症状を持たない電子タバコユーザーにも見られるものなのかを調べる必要があると考えています。
もし前者の肺にしかこの細胞が見られないのだとすれば、lipid-laden macrophageに含まれる成分と、電子タバコのリキッドに含まれる成分との関係性が、症状を引き起こしている可能性があります。
通常の紙巻きタバコに代わる代替品として人気が高まる電子タバコ。タールやニコチンを含まないという点ばかりが注目されがちですが、その裏に潜む弊害についても、今後明らかになってくるかもしれません。