第一印象の良さはどれだけ強く持続するか?
今回の研究の動機について、研究主任のクリス・ハリス(Chris Harris)氏はこう話します。
「私が抱いている疑問は、他の最良な選択肢を試すチャンスがあるにも関わらず、なぜ人々はそれより見劣りする選択肢を選び続けるのかということでした」
「そこで私たちはこの心理作用(バイアス)がどれほど強固なものかを明らかにすべく、ある選択肢が別の選択肢より劣っていたとしても選ばれ続けるのかを調べることにしました」
実験ではまず、オンライン上のプラットフォームを通じて、100名の参加者を募集しました。
実験は次のように設定しています。
チームはまず、ファーストインプレッションの良さによるバイアスを参加者に抱かせるような実験手順を用意しました。
参加者はAとBの2つの袋を提示され、そのどちらかを選んで、中に入ったボールを引くことができます。
ボールの色は黄色か青色で、黄色を引くとポイント獲得、青色だとポイント喪失につながります。
(このポイントの合計点は実験後に得られる金銭の報酬額に換算されます)
ただ参加者はこのとき、一方の袋をもう一方の袋よりも頻繁に見せられました。
この「よく見られる袋」ということで、参加者のファーストインプレッションを良くしようというわけです。
しかし、あまり見せられない袋の方はポイント獲得できる確率が80%なのに対し、頻繁に見せられた袋の方はポイント獲得できる確率が75%と少し低く設定されています。
当たりボールを引いた数 | ハズレボールを引いた数 | |
袋A(当り確率75%) | 9 | 3 |
袋B(当り確率80%) | 4 | 1 |
例えばこの実験では初期の試行では、上の表のような状況になるよう設定されています。
袋Aは提示される回数が多いため、試行回数が増え、結果的に当たりを9回引いていますが、確率的には75%しか当たりません。
一方袋Bは提示回数が少ないため、試行回数が少なく、当たりは4回しかありませんが、確率的には80%当たります。
これは最初のうち、袋Aで「当たりを見る機会が多いな」という印象を与えるため、参加者は袋Aが当たりやすいのでは? という印象を抱きます。
しかし実際は確率的に袋Bの方が高いため、何度もこの実験を繰り返していくと、「あれ、Bの方が当たりやすくない?」と参加者が気づくように設計されているのです。
チームはこの設定で、ポイント獲得のための選択肢として、袋Bが最適であると参加者は途中で気づくが、初期の印象では袋Aが良いと思うようにしたのです。
実験では初期の印象を操作するフェーズの後に、参加者に2つの袋のいずれかを自由に選択してポイントを獲得するゲームを83回行いました。
チームは参加者の選択データを分析し、参加者がバイアスのかかった選択肢を選び続けるか、実験を続ける中で最適だとわかった選択肢にシフトするかを調べています。
果たして、結果はいかに?