第一印象が良いと、他のベストな選択肢よりも選ばれやすい
データ分析の結果、参加者はポイント獲得のためにはベストな選択肢でないにも関わらず、初期に好印象を抱いた袋Aの方を強く好むことが示されました。
しかもこのバイアスは反復される選択テストの中でもシフトされず、参加者は固執して袋Aを選び続ける傾向が見られたのです。
そこでチームは、2つの袋の報酬確率の差(先程は75%と80%だった)をより大きくすれば、参加者がバイアスを克服するのではないかと考え、追加で実験しました。
ここでは新たに100名の被験者を募り、初期に頻繁に提示される袋の報酬獲得率を67%に下げ、あまり提示されない袋の報酬確率は80%に維持しています。
この設定で同じく83回の選択テストを行いましたが、結果に大きな差はありませんでした。
最初に「初期に頻繁に提示され当たりが出た回数を見る機会が多かった袋」を参加者は当たりやすいと一度勘違いしてしまうと、ほとんどの参加者はテストの終わりまで選択肢をシフトさせなかったのです。
以上の結果は、客観的な選択肢としてはベストでないにも関わらず、最初に抱いた肯定的な印象が私たちの中で根強く持続されることを示すものです。
しかしこの傾向は、生物が効率よく生存する上では理にかなっている思考でもあります。
例えば、最適採餌理論(OFT)によると、生物は他に多くの食糧報酬が得られる獲物がいたとしても、慣れ親しんだ獲物に固執する傾向があります。
なぜなら新しい獲物に切り替えるには、捕食戦略の変更や実際の捕食にかかるエネルギーなどのコスト面で高くつくからです。
また野生生物の場合は、新しい選択肢への変更に失敗すれば、生存の危機に陥るリスクもあります。
同じようなことは私たちにも当てはまるでしょう。
たとえ他にベストな選択肢があるとしても、現在の慣れ親しんだ方法で今欲しているだけの成果は十分に得られているわけです。
それなのに、わざわざ時間と労力をかけて、別の選択肢を模索するメリットが果たしてどれだけあるでしょうか。
このようにヒトを含む生物は、100点満点の選択肢を探し続けるよりも、安定していてなるべくリスクのない選択肢を好むのかもしれません。
ただ、別の研究の話ですがADHDの人は、この最初の選択に固執する傾向が低く、状況に応じてころころ選択を変えやすいことが示されています。
そのためADHDは初期の選択にこだわるという生物が持つ傾向のデメリットを克服するために、進化した可能性があるかもしれません。ただそのため、目の前のことに集中しづらく新しい選択肢に目移りしやすいというデメリットが出てしまったのかもしれません。
これはそれぞれまったく異なる研究の話なので、関連させるべきかは注意が必要ですが、非常に興味深い傾向と言えるでしょう。
大きな差はありませんでした。じゃなくて、具体的なデータが見たかったです。