影響の引き算でアノマリーを探す
重力波は優れた大事件のメッセンジャーであることは述べた通り。
しかし重力波による通信も完ぺきではありません。
重力波も光と同じく重力による影響を受けて、波の形状に乱れを生じさせることがあるからです。
例えば地球に向かって進んできた重力波の途中に、ブラックホールや銀河などの大きな質量を持つ存在があれば、それらが発する重力によって、重力波の波形が乱されてしまうのです。
糸電話で例えるならば、糸を伝わってくる振動に、外部環境のノイズ(工事の音など)が混じって聞こえてくるようなものです。
第三者によって波形が乱れてしまう性質は、メッセンジャーとしては短所となります。
しかし「乱れかた」を分析することで、重力波の通ってきた道にあった質量を持つ存在の正体を暴くことができます。
それがたとえ、これまで観測不能だったダークマターであってもです。
ダークマターは謎が多い存在ですが、質量を持っているのではないかと予想されています。
そのため、どんなにうまく隠れていても、必ず重力という「しっぽ」を出してしまい、重力波に影響を与えてしまいます。
地球で観測された重力波のデータから、ブラックホールや中性子星、銀河といった要因を除いていくと、必然的にダークマターをはじめとした未知の物理現象の影響だけが残るのです。
そしてそれらが重力波をどのように乱したかを分析すれば、謎に包まれた性質を調べることが可能になります。