歴史上初めて誕生した人工準結晶
準結晶は、地球上ではほとんど存在しない極端な環境で形成されます。
「その形成には、極端な衝撃、温度、圧力をともなうトラウマ的な出来事が必要です」
ロスアラモス国立研究所の名誉所長で、今回の発見に関する論文の共著者であるテリー・C・ウォレス氏はそのように説明しています。
このような現象は、核爆発を除けば通常は見られません。
天然で発見された初の準結晶は、ハトゥイルカ隕石(Khatyrka meteorite)から見つかっていて、その起源はおそらく太陽系形成の時期までさかのぼることになると考えられています。
赤いトリニタイトから発見された準結晶の複雑さは見事なものですが、なぜこのような形になったかは、まだ誰にもわかりません。
しかし、いつの日か、科学者はこれを解明し、熱力学的に説明できるようになるでしょう。
「他国の核兵器を理解するには、その国の核実験プログラムを明確に理解する必要があります。
私たちは通常、兵器がどのように作られたか、どのような物質が含まれるのか理解するために、放射性物質を含む瓦礫やガスを分析します。
ただ、その信号は減衰していきます。
核爆発現場で形成された準結晶は新しいタイプの情報を教えてくれる可能性があり、しかもこれは永遠に存在しつづけます」
ウォレス氏はそのように語り、今回の発見から、核爆発に関する理解がより深まり、その場所で何が起きたのかを知る手がかりになる可能性を指摘しています。
それは不正な核実験の証拠や、核拡散の抑止のために利用できる可能性があるといいます。
準結晶は、核爆発のような凄まじい衝撃と圧力と温度のもとに生まれてくることがあると示されたことは、今後の準結晶の研究にも役立つ可能性があります。
まだまだ、世の中には不思議なものが満ちあふれているようです。