未熟児を「赤ちゃん」ではなく「胎児」として扱うことで命を救う
人間の妊娠期間はおおむね40週(10カ月)とされています。
しかし様々な原因で、多くの赤ちゃんたちが予定日よりも大幅に早い段階で産まれてしまうことがあります。
特に、妊娠期間が22~23週(5カ月~6カ月未満)といった極端に短い場合、生存率は50%まで低下し、生き残った場合でも90%が重度かつ長期的な健康問題が発生するとされています。
妊娠後、6カ月未満で産まれた赤ちゃんは、酸素呼吸を行うための肺をはじめとした内臓が、外の世界で生きていけるほど十分に成長していないからです。
そこでフィラデルフィア小児病院の研究者たちは、羊の胎児を用いて、追加の発育を行う人工子宮を開発しました。
開発の鍵となった概念は、未熟な状態にある赤ちゃんを「胎児」として扱うという点でした。
人工子宮「バイオバッグ」
新たに開発されたバイオバッグと名付けられた人工子宮の内部は「人工羊水」に満たされ、外部には血液に酸素を送り込み二酸化炭素を取り出す「人工肺」と栄養供給用のチューブがとりつけられています。
研究者たちは、妊娠105日~120日(人間の23週~24週に相当する)のメス羊の子宮を切開して胎児を取り出し「へそのお」を人工肺につなげ、バイオバッグの内部に浸しました。
結果、バイオバッグの内部において子羊の肺と脳が順調に成長していることを確認。
また動画のように、バイオバッグの内部で子羊は小刻みに動き、時には目を開けたり、人工羊水を飲み尿として排出する様子も確認されました。
このような動作はどれも、実際の子宮内部で胎児が行うことと一致します。
自然な羊水には電解質とともに「成長因子」とよばれる胎児の内臓発達を助ける成分が含まれていますが、バイオバッグ内部の人工羊水も、それを忠実に模倣するように作られています。