記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃

まず、この「記憶の移植」問題を理解するためには、最近の衝撃的な研究である「アメフラシの実験」を知る必要があります。
アメフラシというのは海に住むナメクジの仲間で、体はブヨブヨしていて、はっきり言ってしまえばあまり可愛くない生き物です。
でも神経がとても大きくて単純なので、脳や記憶の研究には昔からよく使われています。
2018年の研究では、このアメフラシを使って「記憶らしきものが別の個体へ移るかどうか」を確かめようとしました。
まず研究者たちは、アメフラシの尾の部分に軽い電気ショックを繰り返し与えました。
すると当然アメフラシはびっくりして、体の一部を引っ込める防御反応を示します。
面白いことに、何度もショックを与えられると、その防御反応が長く続きやすくなってしまいます。
つまり、触られると引っ込みやすい状態になったわけです。
しかし、この実験の本番はここからです。
研究者たちは、そうした訓練を受けたアメフラシの中枢神経系から、RNAという分子を取り出しました。
RNAは、細胞の中で情報を運ぶ役割を持っている、とても重要な物質です。
そのRNAを、今度はまったく電気ショックを受けていない別のアメフラシに注射しました。
するとなんと、電気を受けていないはずのアメフラシまで、体を引っ込める防御反応を強く示したのです。
これはまるで、「電気ショックを受けたアメフラシの経験が、RNAを通じて別のアメフラシに移った」ように見えました。
論文では、別に培養した感覚神経細胞にそのRNAを加えると実際に興奮しやすくなったことも報告しています。
しかし、これを「思い出そのものが引っ越した」と考えるのは、ちょっと早すぎるでしょう。
実際に起きたのは、「怖い記憶そのもの」が移ったわけではなく、「怖がりやすい体質」が移ったような現象でした。
わかりやすく言えば、誰かが怖い映画を見た後、その映画の詳しい内容はわからなくても、怖いシーンでドキドキしやすくなっている状態だけが別の人に移ったような感じです。
つまり記憶の細かな場面や出来事が移動したわけではなく、「危険を感じやすい反応の強さ」が引き継がれたということです。
これは非常に重要な違いです。
つまり、この研究が示したのは、「記憶そのものをコピーする」という派手な現象ではなく、「脳や神経の中に、感覚や反応を強める何らかのスイッチがあり、そのスイッチの設定がRNAを通じて他者に伝えられる可能性」です。
そして、こうした「反応しやすさ」や「学習しやすさ」が、体の中で物質を通じて伝わるというアイデアは、実は他の研究でも支持されています。






























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