記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃
記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃 / Credit:Canva
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記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃 (2/4)

2026.03.20 22:00:29 Friday

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血は記憶を運ぶのか?

血は記憶を運ぶのか?
血は記憶を運ぶのか? / Credit:Canva

記憶や体験が体の中を物質として移動する、という話を聞くと、「じゃあ血液でも記憶が運べるの?」と思うかもしれません。

SF映画やホラー小説などでは、血を吸った相手の記憶が流れ込んでくるようなシーンが出てきたりしますよね。

しかし、現実の研究が示すのは、そういう派手なストーリーとはかなり違います。

実際の研究はもっと控えめですが、ある意味でより驚きの内容です。

2014年、米国の研究チームが、老齢マウスを若い血にさらしたり若い血しょうを投与したりしたところ、老齢マウスのの働きや記憶課題の成績が改善することがわかりました。

老齢マウスは人間で言えば、おじいさんやおばあさんくらいの年齢です。

普通なら、記憶力が落ちてしまった脳を若返らせるのは難しいと思われています。

ところが若い血しょうを受けた老齢マウスは、場所や文脈を覚える課題の成績が目に見えて良くなったのです。

では、血液が「若者の記憶」をそのまま運んできたのかというと、実際はそうではありません。

血液が運んだのは、具体的な記憶内容ではなく、「脳の健康状態」を改善するための材料や信号のようなものです。

例えるなら、記憶という本そのものが届いたのではなく、本が読みやすくなるメガネや明るい照明が届いたような感じです。

この研究はその後も進んでいます。

2017年の研究では、赤ちゃんのへその緒の血しょうそのものを老齢マウスに投与すると、海馬の働きが回復し、学習・記憶課題の成績も改善しました。

その後、その効果に関わる候補の一つとして、特定の成分が注目されました。

さらに、2021年には「運動したマウスの血しょう」も似た効果を持つことが判明しました。

運動で変化した血しょう中の成分が、炎症を抑え、脳の調子を整えてくれたのです。

つまり、血液は「記憶のコピー」ではなく、「記憶を作りやすくする環境」を運んでいることになります。

特定の経験や思い出を丸ごと届けるのではなく、脳という畑が元気に育つための「肥料」のような働きをしているのです。

次ページ世代を超えた記憶の継承はあるのか?

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