記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃
記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃 / Credit:Canva
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記憶は注射できるのか? アメフラシが見せた衝撃 (3/4)

2026.03.20 22:00:29 Friday

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世代を超えた記憶の継承はあるのか?

世代を超えた記憶の継承はあるのか?
世代を超えた記憶の継承はあるのか? / Credit:Canva

ここまでは別の個体同士が直接影響を与え合う話でしたが、ここからは話がさらに広がります。

今度は「世代をまたいで記憶や体験が伝わる可能性」の話です。

つまり、父親の体験が子どもに何らかの形で引き継がれることはあるのか、ということです。

2014年、ある研究チームはオスのマウスに特定の匂いと電気ショックを結びつけて「この匂い=危険」と学習させました。

その後、このオスマウスの子どもや孫の世代を調べてみると、なんと一度も電気ショックを経験していない子や孫たちまで、その特定の匂いに強く反応しやすくなっていたのです。

さらに興味深いことに、子や孫の世代では、この匂いを感知する神経そのものが強化されていました。

育て方だけでは説明しにくく、2014年の研究では体外受精や里親実験から生殖細胞を介した継承が示唆され、2020年の研究では精子に含まれるRNAがその一因になりうることも示されました。

これは「父親の怖い体験」が具体的な記憶として子どもに伝わったのではなく、「特定の刺激に対して敏感になる傾向」が遺伝子とは別の仕組みで子孫に受け渡された、という現象です。

もっと身近な例えをすれば、父親が怖い経験をした時、その「怖かった気持ち」や「匂いそのものの記憶」ではなく、「怖い経験に備えやすいように子どものの設定が変わった」と考えるとわかりやすいでしょう。

遺伝子のように、髪の色や目の色を決めるものとは違いますが、特別な設定変更のようなものが精子を通じて子孫に届く可能性がある、ということです。

実際、2020年の研究では、学習を経験したマウスの精子RNAだけを取り出し、まったく関係のない受精卵に入れるだけで、生まれたマウスが父親と同じ刺激に対して敏感になったことがわかっています。

これもまた「記憶そのもの」ではなく、「刺激への反応性」が伝わることを強調しています。

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