がんが広がる第一歩は「元の腫瘍から離れること」
がんの転移では、がん細胞が元の腫瘍から離れ、別の場所へ移動して新たな腫瘍を作ります。
今回対象となったのは、卵巣がんの中でも悪性度が高い「高異型度漿液性卵巣がん」です。
このがんは、がん細胞が腹腔内へこぼれ落ち、腹膜や腸、大網などに付着する「腹膜播種」という形で広がりやすい特徴があります。
このように、がん細胞が周囲との接着を失い、腫瘍の塊から離れていく現象が、がんが腹腔内へ広がる重要な第一歩なのです。
そして卵巣がんには、細胞のDNAを傷つけるプラチナ製剤による化学療法が広く使われます。
その結果、治療を受けたがん細胞の一部は死なず、分裂を長期間止めた状態(細胞老化)になることがあります。
これは分裂を止めても活動が完全に終わるというわけではなく、周囲へさまざまな物質を放出してしまいます。
今回研究チームは、こうした細胞が出す物質が、近くに残ったがん細胞の接着を弱めているのではないかと考えました。
そこで卵巣がん細胞に、プラチナ製剤の一種であるシスプラチンを与えて分裂を止め、その細胞を増殖可能ながん細胞と一緒にマウスの腹腔内へ移植しました。
さらに、分裂を止めた細胞を培養した液だけを回収し、がん細胞を移植した別のマウスへ週3回投与しました。
これにより、細胞そのものではなく、細胞が放出した物質だけでも影響が出るかを確かめたのです。
その結果、培養液だけでもお腹の中でがんのかたまりが増えました。
一方、がん細胞の増え方や死にやすさには大きな変化はなく、主に細胞同士のくっつきが弱くなり、はがれやすくなっていました。
さらに原因を詳しく調べると、重要な物質として果糖が見つかりました。
果糖がどのように細胞のくっつきを弱めたのか、次で詳しく見ていきましょう。































