果糖が細胞膜を変え、腹腔内への播種を増やした
調べてみると、分裂を止めたがん細胞の培養液では、ブドウ糖が減る一方、果糖が増えていました。
そして通常の培養液に果糖を加えるだけでも、卵巣がん細胞の脱離は増えました。
また果糖を利用するために必要な酵素の働きを抑えると、この変化は起こりにくくなりました。
つまり、果糖がそこにあるだけでなく、がん細胞が取り込んで代謝することが重要だったのです。
加えて、果糖を利用したがん細胞では、細胞内でエネルギーを作るミトコンドリアの働きが高まり、その先でコレステロールを作る仕組みが抑えられました。
コレステロールは血液中に多すぎると問題になりますが、細胞にとっては細胞膜を保つ大切な材料です。
細胞膜のコレステロールが減ると、細胞同士や周囲の組織との接着が弱まり、がん細胞が腫瘍の塊から脱離しやすくなります。
実際、コレステロールを補うと脱離は減り、反対にコレステロール合成を妨げると脱離が増えました。
これらの結果から、果糖の代謝やコレステロールの仕組みが、がんの広がりに関わる可能性が示されました。
さらに研究チームは、食事由来の果糖についても調べるため、研究チームはマウスの飲み水に30%濃度の果糖を加えました。
すると、同じ濃度のブドウ糖を与えた群より腹腔内の腫瘍のかたまりが増加。
逆に、がん細胞が果糖を利用できないようにすると、この増加は抑えられました。
患者の血液を調べた分析でも、血中果糖が高い人ほど診断時の病期が進んでいる傾向がありました。
つまり、私たちにとって身近な「果糖」が、がんの転移を促進する意外な要因かもしれないのです。
それでも今回の研究にはいくつか限界があり、果糖を控えることで患者の転移や再発を防げるかは、今後の臨床研究で確かめる必要があります。
そして今後研究チームは、膵臓がんや大腸がん、肝臓がんでも同じ仕組みが働くかを調べる予定です。































