どのような場面で「人前での涙」を抑えるのか
一般的に、泣くことには高ぶった感情を吐き出して落ち着かせたり、周囲から慰めや支援を引き出したりする働きがあると考えられています。
涙は、自分の内側にある悲しみを外へ伝えるサインでもあります。
その一方で、人前で泣くことが「弱さ」や「能力不足」の表れとして受け取られる場合もあります。
こうした涙に対する見方は、文化や性別、その場の人間関係によって異なりますが、人は成長するにつれて人前で泣くことを抑える傾向があるとも報告されてきました。
そこで研究チームは、日本の大学生が、どのような状況で人前の涙を抑えるのかを調査。
大学生169名が参加し、直近3カ月に経験した「泣き」について質問紙で回答しました。
何年も前の強烈な出来事ではなく、最近3カ月に限定したのは、失恋や死別といった人生最大級の涙だけでなく、日常のなかで起きる比較的小さな泣きも捉えるためです。
チームは泣きの経験を6つのカテゴリに分け、それぞれについて、人前で泣いたのか、ひとりで泣いたのかを分析。
さらに、参加者の性格特性や共感性を測定し、泣いた状況との関係を調べました。

思いやりの強い人ほど、相手の前では泣かない?
分析の結果、特に興味深い傾向が見つかったのは、「身近な人の悲しみによって引き起こされた泣き」でした。
性格特性のうち「調和性」が高い大学生ほど、悲しんでいる身近な人の前では泣かず、ひとりになってから泣く傾向が示されたのです。
調和性とは、他者への思いやりが強く、協力的で、人間関係の調和を重視する性格傾向を指します。
一見すると、思いやりの強い人ほど、相手と一緒に涙を流しそうにも思えます。
しかしチームは、調和性の高い人は、自分が泣くことよりも目の前の相手を慰めることを優先した可能性があると考えています。
自分まで泣けば、悲しんでいる相手がこちらを気遣わなければならなくなるかもしれません。
そのため、その場では涙をこらえて相手を支え、安全な場所でひとりになってから感情を解放した可能性があります。
ただし、参加者が本当に「相手を気遣うために泣かなかった」と直接確認されたわけではありません。
また、この結果は「調和性の高い人はいつもひとりで泣く」という意味でもありません。
特徴的な関連が見つかったのは、身近な人の悲しみに共感した場面です。
泣く原因が異なれば、人前で泣くかどうかと性格との関係も変わる可能性があります。
今回の研究が示しているのは、「人前で泣く人」と「ひとりで泣く人」が、単純に異なる性格タイプに分かれるということではありません。
人は自分の悲しみだけでなく、目の前にいる相手の状態や、その場で求められている役割を考えながら、涙を見せるか抑えるかを選んでいる可能性があります。
人前で涙を見せなかった人も、何も感じていないとは限りません。
むしろ相手を優先した結果、自分の涙をあと回しにしている場合もあります。
涙は個人的な感情の噴き出しであるだけでなく、人間関係のなかで調整される社会的なコミュニケーション行動でもあるのです。





























