「許し」を質問紙と反応時間の両方で調べる
人から傷つけられた後、「もう怒っていない」と思いながら、その相手からの連絡を避け続けることがあります。
心理学でいう「許し」は、相手の行為を正当化したり、受けた被害を忘れたりすることではありません。
復讐したい気持ちや相手を避けたい気持ちが弱まり、相手への善意が回復していく心理的な変化を指すのです。
この許しに関係すると考えられてきた性格特性の1つがナルシシズムです。
ただし、ナルシシズムは単に「自分が好き」「注目されたがる」という1つの性質ではありません。
今回の研究が注目した「敵対性の強いナルシシズム(antagonistic narcissism)」は、他者を競争相手として見たり、批判に敵意で反応したり、特権意識や他者を利用する傾向を示したりする側面です。
この傾向が強ければ、他人から傷つけられた経験を自分への攻撃として受け取り、怒りや恨みを手放しにくくなる可能性があります。
しかし、従来の研究の多くは、本人が自分の性格を答える質問紙に頼っていました。
敵意や搾取性は認めにくい一方、「自分は人を許せる」という答えは好ましく見えるため、自己申告だけでは捉えにくい可能性があります。
そこで研究チームは、質問紙に加えて、単語を分類する速さから無意識的な関連性を評価するImplicit Association Test(IAT)を使いました。
対象は、心身医学クリニックで治療を受けていた19~60歳の女性患者102人です。
質問紙では、ライバル意識や特権意識などに加え、傷つけた相手への復讐、回避、善意、普段からの許しやすさを測りました。
IATでは、「自分」と「ナルシシズム的」、「自分」と「許し」がどれほど素早く結びつくかを反応時間から調べました。
そして分析の結果、自分と敵対性の強いナルシシズムを自動的に結びつける傾向が強い人ほど、許しやすさが弱く、相手を避けやすく、善意も低い傾向が見られました。
より詳細な結果を次項で確認してみましょう。






























