自覚しにくい敵対性は「回避」と「善意の低さ」に独自の関連を示した
まず単純な相関では、IATで測った敵対性の強いナルシシズムは、許しに関する5つの指標すべてと有意に関連しており、復讐動機とも結びついていました。
しかし、質問紙で測った自覚的なナルシシズムの影響も含めて詳しく分析すると、すべての関係が同じように残ったわけではありません。
自分と敵対性の強いナルシシズムを結びつける傾向は、質問紙の回答だけでは捉えられなかった許しの個人差と、独自に関連していました。
とくに明確だったのは、IATで測った「許し」との関係です。
この傾向が強い人ほど、「自分」と「許し」が結びつきにくくなっていました。
また、傷つけた相手から距離を置こうとする傾向が強く、相手への善意が低く、普段から人を許しにくい傾向も残りました。
つまり、本人が質問紙では強い敵意を自覚していなくても、自動的な反応や実際の対人姿勢に近い部分では、相手を受け入れにくい傾向が表れていたのです。
一方で、復讐動機については異なる結果になりました。
単純な相関では潜在的なナルシシズムとの関係が見られましたが、自覚的なナルシシズムも考慮すると、独自の関連は確認されませんでした。
代わりに復讐動機と結びついていたのは、質問紙で測った自覚的なライバル意識でした。
研究者らは、この違いには心理反応の性質が関係している可能性があると考えています。
相手を避けたり、相手への温かい感情を失ったりする反応は、「もう会いたくない」「信用できない」と瞬間的に感じる、無意識的で感情的な反応に近いと考えられます。
これに対して復讐には、相手にどう仕返しするか、いつ行動するかを考えるなど、より意識的な計画や判断が必要になる場合があります。
そのため、自覚しにくいナルシシズムは、積極的に相手を攻撃することよりも、相手との距離を広げ、善意を向けなくなる形で表れやすいのかもしれません。
ただし、この心理過程を今回の研究が直接確かめたわけではありません。
今回の結果は、本人が「恨んでいない」と考えていても、無意識的な対人反応が関係修復を妨げる一因になっている可能性を示します。
一方で、調査は1時点だけの横断研究であり、対象も女性の臨床患者102人に限られ、実際の仲直り行動も観察していません。
IATも課題の状況や測定誤差の影響を受けるため、無意識の性格を断定できるものではありません。
今後は、男性や一般集団を含む大規模調査に加え、参加者を長期的に追跡し、日常の対人行動を記録する研究が必要です。






























