鏡なのに「別の画像」を返す仕組み
遊園地の曲がった鏡も、私たちの姿を細長くしたり、横に広げたりして、本来とは違う姿を映します。
しかし、そこで起きているのは元の像を変形させることです。
一方、今回の「嘘をつく鏡」は、入ってきた画像の情報を、あらかじめ決めておいた別の画像へと変換します。
これは一般的なディスプレイのように、単に画像を表示する技術ではありません。
光として運ばれてきた視覚情報を別のものへと変換するというものです。
その鍵となるのが、光を細かく操る微細な回折構造です。
光には波としての性質があり、その波の山と谷の位置関係にあたる「位相」を場所ごとに変えると、光同士の重なり方を調節できます。
研究チームはこの性質を利用し、反射後の光が、ある場所では強まり、別の場所では弱まるようにすることで、元とは違う画像を作り出しました。
では、複雑な微細構造をどう設計したのでしょうか。
ここで使われたのが深層学習です。
さまざまな入力画像を与えながら、出力が目的の画像に近づくよう、光の位相を変える構造をコンピューター上で繰り返し最適化しました。
ただし、AIが鏡の中でリアルタイムに偽画像を生成しているわけではありません。
深層学習を使うのは主に設計段階であり、適切な構造ができれば、画像変換そのものは光の回折と干渉によって起こります。
シミュレーションでは、衣類などの画像を「バッグ」に、さまざまな手書き数字を「8」に、簡単な線画を「パンダ」に変換するモデルが作られました。

さらに実験では、150×150の回折要素を持つ構造鏡をマイクロミラーアレイ上に再現し、学習に使っていない10枚の手書き数字画像をすべて「8」へ変換することに成功しました。
この変換は青、緑、赤に対応する480、550、600nmの光で確認され、3色を同時に照射した場合にも成功しています。
さらに別の実験では、500〜600nmという連続した波長域でも機能する広帯域型が検証されました。
では、この「嘘をつく鏡」が興味深い発明だと言えるのはなぜでしょうか。


































