「隠す」のではなく「別物に見せる」新しい光学迷彩へ
この鏡が興味深いのは、学習に使った画像だけを別物に変えられるわけではない点です。
研究チームが、学習時には見せていない画像や、訓練とは別の画像データを入力したところ、それでも設定したダミー画像を作り出せました。
さらに入力画像を最大90度回転させたり、位置をずらしたり、50〜200%に拡大縮小したりしても、偽画像への変換はかなり維持されました。
ノイズを加えた場合には品質が低下したものの、変換そのものは続いていました。
つまり、特定の数枚の画像だけを覚えた仕組みではなく、ある程度異なる入力にも対応できることが示されたのです。
さらに、将来的にこの微細構造を固定した受動的な光学素子として製造できれば、画像を変換するたびにコンピューターで計算したり、ディスプレイに偽画像を表示したりする必要はありません。
入ってきた光そのものが、微細構造を通じて別の画像へと変換されるのです。
こうした特徴から、研究チームは将来の応用先としてカモフラージュやセキュリティ、エンターテインメントなどを挙げています。
たとえば重要な装置そのものを透明にするのではなく、その前に「嘘をつく鏡」を置き、ありふれた模様があるように見せるという発想です。
これは「見えなくする」のではなく、「別のものがあると思わせる」タイプの光学迷彩といえます。
ただし、今すぐ家庭の壁に掛けられるような鏡が完成したわけではありません。
太陽光や室内照明のような複雑な光の中で、実際の3次元物体をさまざまな方向から見ても同じように偽装できる段階ではないのです。
研究チームは、より現実の照明に近い条件でも働く設計を数値的に示していますが、実用化にはさらなる開発が必要です。
それでも、物体を消すのではなく、そこから届く光そのものを別の画像に変えるという今回の発想は、「隠す」という技術に新しい選択肢を加えるものになりそうです。


































